盗撮容疑をかけられて取調べに応じる際のポイント

犯罪の疑いをかけられると、警察官による『取調べ』を受けることになります。

取調べの結果は『供述調書』という書類にまとめられますが、閉鎖的な取調室で警察官と一対一で対峙することになるため、その結果は不透明であり、疑いをかけられた本人にとっては自分が思っていたとおりにならないケースが多々あります。

盗撮の疑いをかけられた場合でも、やはり取調べを受けることになりますが、取調べの対応によってまったく思ってもいなかった方向へと事件が進んでいくおそれがあるため、取調べ対策は必須です。

ここでは、盗撮容疑をかけられて取調べに応じる際のポイントを紹介します。

盗撮容疑をかけられて取調べに応じる際に守るべきポイント

とても大切なことなので、まずは一番大切なポイントを挙げておきましょう。

盗撮容疑をかけられて取調べに応じる際には、必ず次の2点を守ってください。

  • 【ポイント①】嘘の説明をしないこと
  • 【ポイント②】自分の説明と違う方向に話が進んでしまったらはっきりと拒絶すること

この2点を守ることで、その後の経過や処罰の程度は大きく異なることを覚えておいてください。

取調べでは「嘘の説明」をしない

取調べにおいて嘘の説明をすると、かなりの高確率で嘘がバレてしまいます。

なぜなら、取調官は捜査によって得た客観的な証拠を手元に持っていて、証拠と照らしながら「どんな供述をするのか」を探っています。

盗撮容疑であれば、確かに自分のスマートフォンを使って撮影したのに「撮っていない」と言い逃れをしたとしても、取調官はスマートフォンの画像記録を手元に持っているので、すぐに嘘だとバレてしまうわけです。

盗撮容疑で現行犯逮捕されて直後の取調べでは、嘘をついても「そうなんだね」と軽く受け流されてそのままの内容を供述調書に記載されます。

この段階ではあまり厳しく追及されませんが「バレていない」などと安心してはいけません。

逮捕直後の取調べは、わずか48時間という警察の持ち時間の中で、限られた内容の取調べしかおこないません。

「警察の持ち時間は48時間」といっても、被疑者の寝食や供述調書を作成する事務的な時間などを考慮すると、実際に取調べに使うことができる時間は8時間程度が限界です。

 

しかも、送致前の取調べでは、事件に関する「事実の調書」だけが作成されるわけではありません。

 

被疑者がどんな生い立ちで、どんな仕事をしてきて、性格や趣味などを含めてどんな人柄なのかを説明する「身上の調書」も作成する必要があります。

そのため、事件の重要な部分の取調べはほとんどが「被疑者が説明するがまま」のカンタンな内容のものになり、証拠をつきつけて事実を究明するような取調べはおこないません。

割り切った言い方をしてしまえば、警察は「嘘をつくならそのままでいい、どうせ後からゆっくり突き崩せばいいのだから」という姿勢をとります。

当然、警察は送致書類の中に動かぬ証拠をまぜているのだから、被疑者の供述だけが嘘を主張していることになり、検察官は「もっと取調べを尽くす必要がある」と裁判所に勾留を請求するでしょう。

結果、身柄拘束の期間が長引くうえに、その後も「嘘をいって罪を逃れようとした」と評価されてしまうので、嘘の説明をすることは被疑者自身にとって損でしかないのです。

間違っていることにははっきりと拒絶の意思を示す

警察の取調べでは、警察捜査の方向にむかって誘導されることが多く、自分自身では「そうではない」と思っていても強く押し込まれるケースがあります。

とはいっても、刑事ドラマで描かれるような恫喝はほとんどありません。

警察の取調べといえば、怒鳴る、暴力を振るうなどをイメージするかもしれませんが、現代の警察でそんな取調べをする取調官はほとんどいないはずです。

 

では、警察の取調べが優しくなったのかといえば、それも間違いです。

ただ恫喝や暴力に頼らなくなったというだけで、別の方法で被疑者の供述を捻じ曲げようとします。

たとえば、盗撮で逮捕されたとはいえ、実はLINEなどのメッセージを返信していただけで、盗撮の事実はなかったとします。

もちろん、スマートフォンには盗撮画像は保存されていませんが、被害者を名乗る女性が「撮影音が聞こえた」と主張していたとしましょう。

すると、警察は「実は盗撮をしたが被害者に気づかれてとっさに削除し、証拠を隠滅したのでは?」と疑います。

スマートフォンの記録を解析しても、当然、動かぬ証拠は見つかりません。

なんとかして被疑者の自供を得たい取調官は、はっきりとは認めないまでも可能性はあるという程度の供述に着地させようとします。

  • もしかすると、スマートフォンが女性のスカートの中に向いていたかもしれない
  • 撮影はしていないけど、カメラを起動していた可能性はある

こんなあいまいな供述をわずかに差し込むことで「絶対にやっていない」とは主張していない内容に捻じ曲げようとするのです。

もし供述調書に「そんなことは供述していない」という内容が差し込まれていれば、遠慮なく「この部分は間違っている」と主張することが大切です。

盗撮しても逮捕されないことがある?

『盗撮』が犯罪になることは広く知られていますが、では盗撮行為がどんな犯罪になるのかを正しく説明できる人は少ないでしょう。

盗撮行為は、状況に応じて次の3つの罪名のいずれかに該当します。

  • 都道府県の迷惑防止条例違反
  • 軽犯罪法違反
  • 建造物侵入罪

この3つの罪名のうち、ほとんどの盗撮事件が迷惑防止条例違反または軽犯罪法違反のいずれかによって処理されます。

実は、この3つの罪名のうち軽犯罪法違反に限っては、警察は逮捕に踏み切ることがほとんどありません。

 

なぜ軽犯罪法違反に該当した場合は逮捕しないのでしょうか?

盗撮が軽犯罪法違反に該当するケース

盗撮行為が軽犯罪法違反に該当するケースをチェックしてみましょう。

軽犯罪法の条文のなかで、盗撮行為を禁止しているのは第1条の23です。

軽犯罪法 第1条

左の各号の一に該当する者は、これを拘留または科料に処する。

(各号省略)

23 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

ごらんのとおり、軽犯罪法第1条の23では、盗撮については直接的には触れていません。

この条文は「のぞき」を処罰の対象としており、盗撮行為自体を対象としているわけではないのです。

たとえば、被害者に気づかれたためとっさに証拠画像を削除した場合などでは、撮影行為が確認できないので、警察は軽犯罪法違反の適用を考えることになります。

軽犯罪法違反での逮捕は限られた条件下のみ

盗撮行為が軽犯罪法違反に該当した場合でも「犯罪だから逮捕される危険はある」と思うでしょう。

ところが、軽犯罪法違反の事件では、ごく限られた条件下においてのみでしか逮捕はされません。

軽犯罪法第1条の違反では、罰則が「拘留または科料」と定められています。

拘留とは1か月未満の身体刑、科料とは1万円未満の金銭刑ですから、刑罰としてはごく軽いものといえます。

 

ここで、刑事訴訟法という法令を見てみましょう。

【刑事訴訟法第217条】

30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合または犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、前213条から前条までの規定を適用する。

【刑事訴訟法第199条】

1 検察官、検察事務官または司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪については、被疑者が定まった住居を有しない場合または正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

この条文は「軽微犯罪の逮捕の条件」といわれており、つまり拘留や科料にあたる犯罪については次の2点のいずれかに該当する場合に限ってのみ逮捕が可能となります。

  • 住居や氏名が明らかではない場合
  • 逃亡のおそれがある場合

この条件を前提にすれば、たとえば身柄を確保された時点で特定の住居がない「住居不定」の状態や、身分証などで確認もできず氏名も名乗らない場合、身柄を確保されるまでの間に逃走しており逃亡の危険が明らかな場合でなければ、逮捕状による通常逮捕も、令状によらない現行犯逮捕も認められないことになります。

もし、盗撮の疑いがかかった時点で逃走の気配もみせず、堂々と身分を明らかにしていれば、たとえ実際に盗撮をしていたとしても逮捕できません。

逮捕状を請求しても裁判所は請求を却下し、現行犯逮捕されたとしても即日で釈放されるでしょう。

逮捕されなかったとしても任意の取調べが続く

軽犯罪法違反では逮捕されないケースが多いことは確認できましたが、では「逮捕されなければそれで終わり」というわけではありません。

軽犯罪法違反は非常に軽微な行為まで処罰対象を拡大した法令なので、軽犯罪法を根拠とした逮捕が横行すれば、権力が濫用されるおそれがあります。

この条件は「逮捕によって人権侵害が横行してはいけない」という方針で定められていることであって「軽微犯罪だから見逃しても良い」という解釈にはなりません。

もし盗撮行為が軽犯罪法違反に該当した場合は、逮捕されずに在宅のままで捜査対象となる『任意事件(または在宅事件)』で処理されることになります。

任意事件では、身柄拘束を受けません。

自宅に帰ることができるし、取調べがない日は会社や学校に通うのも自由です。

帰省や旅行が制限されることもありません。

 

ただし、取調べの日程は守る必要があり、もし正当な理由なく指定期日に出頭しなかった

場合は「身柄を拘束して取調べをおこなう必要がある」と判断されかねません。

「逃亡のおそれあり」と判断されると、任意事件として捜査が進んでいても途中で逮捕されることがあるので、面倒でも指定期日の出頭は守る必要があります。

盗撮事件の取調べで聴取される内容と対応のポイント

警察の取調べを受けた経験があるという人は、ごく少ないでしょう。

実際に盗撮容疑をかけられて取調べを受ける場合には、どのような内容を尋ねられるのでしょうか?

それぞれの聴取内容と、それに対する回答のポイントを紹介します。

生い立ちなどの身上関係について

先ほども登場しましたが、事件を送致する場合には必ず「身上の調書」が作成されます。

  • 出身地や育った場所などの生い立ち
  • 父親や母親、兄弟姉妹や配偶者などの家族関係
  • 中学校、高校、大学などの学歴
  • これまでの職歴
  • 犯罪経歴など
  • 趣味や特技など
  • 自分で思う長所や短所、性格など

これらの内容の聴取を受けます。

「プライベートな問題なので話したくない」とか「黙秘したい」と言いたくなるかもしれませんが、身上関係の取調べは事件の事実に関する取調べではないので、頑なに拒絶する必要はありません。

取調官は被疑者を目の前にして取調べを通じて人柄などを把握できますが、警察から送致書類を引き継がれた検察官や、証拠として提示された裁判官としては、被疑者がどんな人物なのかを判断する材料がないのです。

身上の取調べは、プロフィールづくりの一環だと考えて特に包み隠すこともなく応じるのがベストです。

日ごろから会社や学校に欠かさず通い、家庭との不和もなく、罪を犯しても当然と思われるような人物ではないといアピールしたいのであれば、むしろ積極的に良い点をアピールするべきでしょう。

なお、身分や宗教に関しては、センシティブな内容なので身上の調書には記載しないのが通例です。

質問しないのが取調べの基本であり「答えたくありません」と回答しても何ら問題はありません。

事件当日の行動について

盗撮容疑で取調べを受けているのに、取調官はこんなところばかりを聞いてきます。

  • 当日は朝の何時に出発したの?
  • どうしてその電車に乗ったの?
  • なぜそのスーパーに立ち寄ったの?
  • 当日に友人や知人など誰かと会った?
  • 事件の前に立ち寄った場所はある?

取調べを受けている当事者としては「そんなこと、関係ないじゃないか!」と言いたくなるような質問ばかりです。

 

なぜ取調官が事件に直接の関係がない行動まで詳しく尋ねるのかというと、目的は2つあります。

  • 嘘を突き崩すだめ
  • 供述の信ぴょう性を高めるため

供述の重要な部分に嘘があると判断していれば、取調官はいろいろな方向から嘘を突きそうとします。

ひとつでも嘘があれば、その小さな穴を大きく広げて「やはり重要な部分でも嘘をついているはずだ!」と攻め立てるためです。

特に気にするほどのことではない内容でも、はっきり覚えていないような質問もあります。

たとえば「直前に立ち寄ったコンビニではなにを買ったの?」という質問があったとしましょう。

もし、なにも買わずに雑誌を立ち読みしただけだったとすれば、間違いなく「どんな雑誌を立ち読みしたの?」という質問が加わります。

いくつかの雑誌を立ち読みしたのでよく覚えていなかったため「週刊〇〇だったと思います」と適当に答えてしまうと、裏付け捜査で「その雑誌は最新号との入れ替えのために陳列していなかった」といった事態に陥ることがあります。

はっきり覚えていることはありのままで、覚えていないまたは記憶が曖昧な部分については「はっきりと覚えていない」と答えるべきです。

はっきりと覚えていることがあれば、ぜひ積極的に供述しましょう。

被疑者が一貫してつじつまのあう供述をしており、裏付け捜査でもそのとおりの事実が確認できれば、供述の信ぴょう性が増し、事実の否認や反省の態度なども信用されやすくなります。

犯罪の事実について

盗撮容疑の取調べでもっとも重要なのが、犯罪の事実についての聴取です。

  • どのような方法で盗撮したのか?
  • 盗撮を実行したときの行動手順や周囲の状況
  • 盗撮をしたときの心情

盗撮容疑で取り調べるのですから、犯罪に該当する行為があったことを自らが認めるか否かが取調べの山場となります。

もし、実際に盗撮をしたのであれば、手順や周囲の状況などを記憶している範囲でできるだけ詳しく供述するべきです。

特に理由もなく「答えたくない」とか「黙秘したい」と取調べを拒絶しても、被害者や目撃者の供述、防犯カメラの映像やスマートフォンの記録などの証拠をもとに書類がまとめられてしまいます。

警察が作る「これらの証拠から、盗撮は明らかだ」という書類の中に、特に理由もないのに「答えたくない」と回答している供述調書があれば、検察官や裁判官に「反省していない」と評価されるだけです。

また、盗撮の事実など絶対にないのに疑いがかけられているのであれば、そのときの状況などを詳しく説明して、身の潔白の主張に徹するべきでしょう。

もちろん、ねじ曲がった供述調書には「そんなことはいっていません」と拒絶し、訂正してもらなければ署名や指印も拒否するべきです。

たとえ認められない内容であっても、訂正なしで署名・指印してしまうと、供述調書が完成して読み聞かせたうえで閲覧させて、本人が同意したという意味になってしまいます。

間違った内容であれば絶対に認めず、あいまいな「~だったかもしれない」や「~だった可能性はある」といった日本語のマジックに騙されないようにしましょう。

盗撮容疑で取調べを受ける前に、まず弁護士に相談する!

盗撮を含めて、いわゆる「痴漢」などのわいせつ犯罪は、規制が強まる傾向があります。

わいせつ犯罪は、のぞきや盗撮では満足できず痴漢に発展し、痴漢行為だけでは飽き足らず強制わいせつ・強制性交事件へと発展する危険があるとされており、入口となる事件でも処罰を強めて全体的な発生を抑えようという動きがあるからです。

警察は、取調べにおいて完全に突き崩す「完落ち」を狙っており、わいせつ犯罪では特にその傾向が強く表れます。

もし盗撮の容疑をかけられてしまった場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。

弁護士を選任してれば、実際に盗撮をしていたとしても、被害者との示談や捜査機関へのはたらきかけによって、逮捕や長期間の身柄拘束を回避できる可能性があります。

また、実際には盗撮などはしていないという場合には「盗撮をしていない」という客観的な証拠を見つけ出すサポートにも徹してくれます。

任意の取調べであれば、弁護士の同席を求めるなどの対策によって警察の違法捜査をけん制・抑止することも期待できます。

さらに、弁護士から取調べに対するアドバイアスをもらうことで、実際に取調べに応じる際に「なぜそんな質問を受けるのか?」や「この質問に何の意味があるのか?」などの疑問をあらかじめ払拭できます。

取調べの状況を逐一報告していれば、暴行や誘導などの違法な取調べがおこなわれた場合でもすぐに抗議できるでしょう。

 

「盗撮の容疑をかけられてしまった」

「盗撮してその場を逃げたが、逮捕されるかもしれない」

 

こんな心配やお悩みを抱えている方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

盗撮事件を含めて、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士が、みなさんのお悩みを解決するために全力を尽くします。