就業規則とは?必要性や記載内容・注意点などを弁護士が解説
「就業規則」という言葉をよく聞くことがあると思います。
しかし、「就業規則」とはいったい何を指すのかと感じる方もおられると思います。
また、「就業規則」を理解したとしても、企業にとって、必要性や何を記載するべきなのかなど分からないこともあると思います。
そこで、本コラムでは、「就業規則」について解説した後に、その必要性や記載内容などについて解説をします。
Contents
1.就業規則とは?
就業規則とは、簡単に言うと、会社内におけるルールです。
会社は、それぞれの考えを持った人が集まります。
その方々は、みんな同じ考えや意見を持っているとは限りません。ある人にとっては当たり前と思っていることが他の人にとっては当たり前でないこともあります。
そのため、社員同士でトラブルになることや社員と会社との間における考えが異なることなども生じることがあります。
そうすると、考え方や意見の異なる人たちが集まる組織の中では、トラブルが生じたときの対処やトラブルを事前に防止するための対策などの一定のルールがあることが重要になります。いろいろな人々が集まる組織(会社)の中で適用されるルールが就業規則になります。
2.就業規則を作成するメリット
では、就業規則を作成することの意味はどこにあるのか、作成することによるメリットも含めて解説します。
まず、就業規則を作成する必要があるのかという問題があると思います。
就業規則については、労働基準法89条において、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」と定められています。
そのため、常時10人以上の労働者を使用する場合には、就業規則を作成する必要があることになります(常時10人以上の労働者を使用しない場合には、就業規則を作成する必要はないことになります。)。
もっとも、常時10人以上の労働者を使用する場合にはもちろんですが、常時10人以上の労働者を使用しない場合でも、就業規則を作成しておくことによるメリットもあります。
3.就業規則を作成するメリット
就業規則を作成することにより、以下のメリットがあると考えられます。
①労使間のトラブル防止
就業規則とは、会社におけるルールです。
労使間において、何もルールがない場合には、何か問題が生じたときに対処方法が決まっていないことにより、問題となった事象に対する対応方法(懲戒等)に対して互いの見解が対立し労使間でトラブルになることがあります。また、労使間で決めごとをしておかなければ、明確なルールがないことで例えば労働時間、休息、有給等の取り方などどうするのかトラブルになってしまうこともあります。
そこで、ルールがないことによる社員とのトラブルを避けるために、会社において就業規則で定めておくことで、トラブルになることを避けることができます。
例えば、賃金の問題や退職に関する事項などは、働く者にとって重要な関心事だと思います。このような事項については、予め明確になっていない場合、当該事情が問題になった際に、毎回使用者が何の基準ももたず人それでその時々の判断をしていたら当然労働者側からは信用を失い争いとなる可能性があります。就業規則を作り、ルールを予め明確にしておくことで労使間でトラブルを防止することができます。
②多様な労働形態を取り入れられる
現代においては、多様な働き方があります。会社によっては、テレワークを行うことができたり、フレックスタイムで労働時間をある一定の時自由に定めることができたりと、働く人にとって、ワークスタイルに合わせた労働環境が整備されている会社も多くあります。
これらの制度を利用するにあたっても、就業規則にしっかりと定める必要があります。
例えば、フレックスタイムの制度を利用するにあたって就業規則に定められていなければ、会社が承諾しない限り、労働者は会社に対してフレックスタイムの利用を求めることはできません。
また、テレワークを用いるにあたっても、会社に出社するわけではありませんので、出退勤をどのように管理するのかなど考えておく必要のあることがあります。
そのため、多様な働き方を設けるためにも就業規則を作成しルールを整備しておくことで、社員のライフワークバランスを図り、より良い労働環境を整備することができ、社員の離職率の低減や生産性の向上にもつながるものとなり、社員や会社双方のメリットになります。
③コンプライアンスの遵守
昨今では、会社を経営する上でコンプライアンス(法令遵守)を徹底するということがとても重要なことになっています。
コンプライアンス問題の中には、社内におけるハラスメント問題なども含まれます。
社員によるコンプライアンスを促すために、就業規則において、ハラスメントに対する対応や相談窓口を設けるなどでコンプライアンス違反を事前に防止することが必要となっています。ハラスメント問題については、後々に大きな問題となってしまう可能性もあります。そのような問題を防止するためにも、就業規則内でハラスメントの防止を促すための対応や相談窓口を設け、社員に対してしっかりとハラスメントに対する規則を周知する必要があります。
また、コンプライアンスに違反をした社員に対する対応(懲戒規定等)なども定めることで、後々のトラブルを防止することもできます。
4.就業規則に記載すべき内容
それでは、就業規則には何を記載するべきなのか、定める必要のある事項はあるのかなども気になるところかと思います。
就業規則には、絶対に定める必要がある事項や会社において何らかの制度を置く場合に定めることが求められる事項があります。
就業規則には、記載する事項として、①絶対的記載事項、②相対的必要記載事項、③任意的記載事項の3つに分けることができます。
以下、3つについて説明します。
①絶対的必要記載事項
絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項を言います。
この必ず記載しなければならない事項の1つでも記載していない場合には、30万円以下の罰金が科されることになります。
もっとも、絶対的必要記載事項が欠けていた場合でも、必ずしも就業規則が無効になるというわけではありません。
では、絶対的必要記載事項でどのようなことを記載しなければならないかというと、例えば、「始業・終業の時刻」「賃金」「退職」に関する事項などがあります。
このように、労働基準法において、絶対的に記載を求める事項が定められています。
②相対的必要記載事項
相対的必要記載事項とは、会社において何らかの制度を置く場合には、必ず就業規則に記載をしなければならないとされる事項を言います。
たとえば、会社において、退職金の支給に関して制度を設けている場合には、退職金の制度について、就業規則で定めておく必要があります。
このように、会社において、制度がある事項については、会社内での制度を明確にするためにも就業規則に定めることが求められています。
③任意的記載事項
任意的記載事項とは、就業規則への記載が任意とされている事項をいいます。
例えば、当該記載事項で多いものは、就業規則を定める目的や会社の理念などを定めることがあります。
5.就業規則作成の注意点
就業規則を定める上で、注意を要することは、就業規則を定めるための手順などの決まりを遵守すること、法律で就業規則に記載すること定めることが求められている事項などを把握してもれなく記載することにあります。
6.就業規則の作成及び内容の検討を弁護士に依頼するメリット
就業規則は、会社内で作成することのできるものです。
しかし、法律上、記載をしなければならない事項や法律の改正などによって記載を求められている事項などもあり、記載の内容が多岐にわたっております。
また、就業規則の記載の仕方によっては、記載事項がもとでトラブルに発展する可能性もあります。
以上のようなことからも、法律の専門家である弁護士に就業規則の作成や既に就業規則がある場合には現行法に適応しているのかなどの確認を依頼することで、安心して就業規則を策定することができるようになります。
そして、企業にとって、就業規則に設けたい事項などもあるかと思われます。そのような事項が法律上設けることのできる内容なのか、設けることができるとしてもどのように記載するのが適切なのかなどのアドバイスを受けることも弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。
そのため、就業規則の作成や就業規則の内容の検討などを弁護士に依頼することで、法令に適合した会社におけるルールを定めることができるようになります。
稲葉セントラル法律事務所では、就業規則の策定をはじめ企業法務に精通し多くの企業様からご依頼をいただいております。就業規則等を作成したいとお考えの企業様は、是非弊所にお問い合わせいただきご相談いただけたらと思います。