空き家を相続するときの対処法は?相続放棄の手続きや相続する際の注意点などを弁護士が解説

1.はじめに

近年、人口減少や高齢化などを背景に全国的に空き家が増加している状況です。

2015年5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(いわゆる「空家法」)で定義される「空家等」は、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの(及びその敷地)」のことを言います(空家法第2条1項)。

総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計¹」によれば、総住宅数のうち、空き家は900万戸と過去最多となっており、今後も急速に増加していくことが予想されています。

中²でも、岩手県は東北地方の中でも最も空き家率が高く、17.3 %と全国の空き家率(13.8%)よりも大幅に上回っています³。

¹総務省HP 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果
²総務省・前掲注1)4頁
³国土交通省 空き家政策の現状と課題及び検討の方向性 7頁

国土交通省の調査によると、使用目的が定まっていない「その他の空き家」のうち、その所有原因は約6割が「相続」です¹。

空き家を相続しても、「空き家が遠方にある」、「相続人の中に住みたい人がいない」などの理由で、空き家を放置している方も多いと思います。しかし、最近(2024年11月15日)岩手県住田町で、空き家であった住宅1棟が全焼し、隣接する住宅少なくとも2棟に延焼する火事があったように、空き家の放置は大変危険です。(空き家から火災が発生した場合の所有者の責任については、こちらをご参照ください。(空き家で火災が発生したら、所有者は責任を負う?空き家で火災が起きた場合の法的責任を弁護士が解説

本記事では、空き家を相続しない方法や、空き家を相続したあとの対処法について解説します。

¹国土交通省・前掲注3)

 

2.空き家を放置するリスク

「ゴミ屋敷状態でもない限り、空き家を放置していても特に問題はないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、空き家を放置することには次のようなリスクがあり、ひいては近隣住民との法的トラブルに発展する恐れもあります。

建物の老朽化

家屋は、適切な管理をしないと劣化が進みます。定期的なメンテナンスや修繕を怠ってしまうと、台風や強風の際に外壁材や屋根材が落下したり、雨漏りの放置で室内の床が腐ったり、さらには、建物自体の倒壊や、光の反射などでも起こり得る「自然発火」を原因とする火災が発生する恐れも出てきます。

また、「台風の時に瓦が吹き飛んで隣家の窓ガラスを割ってしまった」、「傾いていたブロック塀が崩れて、通行人に怪我をさせてしまった」など、他人を巻き込んだ被害が生じてしまうと、所有者として、損害賠償責任を問われることになりかねません(民法717条1項参照)。

地域の景観の悪化

定期的な換気や掃除を怠ると、ネズミや害虫が発生する可能性があります。空き家がこうした害虫や害獣の温床となってしまうと、悪臭や糞尿により、近隣の住民に多大な迷惑をかけることになり得ます。

また、空き家の老朽化が進むと、近隣の景観を損なうほか、そのような外観がゴミの不法投棄を誘引する可能性もあります。

不法侵入、放火

空き家は「人の気配がないこと」の目印のような役割を果たしてしまうため、犯罪を誘発するリスクが大きくなります。そのため、内部を荒らされたり、放火、違法な活動の拠点化が発生するおそれがあります。

固定資産税が高くなる

不動産には毎年、固定資産税と地域によっては都市計画税が課されます。固定資産税の税率は評価額の1.4%、都市計画税は自治体で決められた数値(上限は0.3%)ですが、住宅が建っている土地に対しては、固定資産税・都市計画税の減額措置があります。

しかし、空き家対策特別措置法上の「特定空家」に指定され、さらに勧告を受ける、と固定資産税の算出基準となる固定資産税評価額が6分の1に軽減され、住宅用地特例が適用されなくなります。 つまり、土地の固定資産税が最大6倍となってしまう恐れがあります。

罰金が科される可能性がある

全国で放置空き家が問題視される中、国会では「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)が平成26年11月に成立しました。 空き家法上の「特定空き家」に指定を受けると、行政から「助言」「指導」「勧告」「命令」の順で改善を要請されることになり、最終段階である「命令」が下され、所有者が命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科されるということもあり得ます(空き家法30条1項)。

 

3.空き家を相続したくないときの対処法は?

空き家を相続したくない場合の対処法として、「相続放棄」を行うことが考えられます。

法定相続人が相続放棄を選択すれば、最初から法定相続人ではなかったという扱いになる(民法939条)ため、空き家の相続を避けることができます。

しかし、「相続放棄」は、被相続人の遺産を相続する権利や義務を一切放棄するため、空き家以外の遺産も相続できなくなります。

つまり、相続放棄をすると空き家や被相続人のマイナスの財産(債務や未払金)だけでなく、空き家の他のプラスの財産(預貯金や他の不動産など)も引き継ぐことができません。そのため、預貯金やその他の不動産などを相続したい場合、相続放棄をすることができないので、注意が必要です。

相続放棄の手続きは、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出する必要があり(民法938条)、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に提出しなければなりません(民法915条1項)。

 

4.空き家を相続した場合の対処法は?

売却

空き家を放置しないために考えられる対処法として、まず、空き家の売却が考えられます。空き家を売却する場合、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「空き家控除」といいます)が適用できる場合があります。

特例の詳細については、以下をご参照ください。

国税庁HP No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

空き家の売却先をご自身で探すのが難しい場合、岩手県の市町村が運営している「空き家等バンク」に登録して、買い手を探すことも可能です。

空き家等バンクの詳細については、以下をご参照ください。

盛岡市HP 空き家バンク制度
収益物件化

空き家を賃貸用住居として貸し出すことも選択肢のひとつです。

賃貸として貸し出すことができれば毎月家賃収入を得ることができますが、賃貸として貸し出せる状態にするため、家屋をリフォームやハウスクリーニングする必要があり、初期費用がかかります。

また、貸主責任が発生するため、居住やインフラに関するトラブルが発生した場合は貸主として対処しなくてはなりません。

そして、貸し出した場合は、売却の項目で紹介した「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は要件から外れてしまうため、使うことができないので注意が必要です。

相続土地国庫帰属制度の活用

空き家の売却が難しい場合に考えられる対処法として、「相続土地国庫帰属制度」の利用が挙げられます。

相続土地国庫帰属制度とは、令和5年4月よりスタートした新しい制度であり、相続または遺贈によって取得した土地(共有持分含む)を国に帰属させる、つまり管理責任や所有権を国に渡すものです。

国庫への帰属が認められると、一定の負担金を納付した後に国庫に帰属されるため、固定資産税も納付しなくてよくなり、重い管理責任からも解放されます。

しかし、すべての相続した土地が国庫に帰属できるわけではなく、要件に該当する必要があります。

5.弁護士にご相談ください

遺産の中に空き家が含まれており、どう対処すればいいか分からないという話は珍しくありません。空き家をそのまま放置した場合、近隣へ迷惑がかかるというだけではなく、倒壊による危険等もあります。

そのため、空家特措法など、所有者等に空き家の管理を求める法整備が進められてきました。

空き家を放置していれば、行政指導等を受け、命令に従わなければ過料を科されることもあります。

また、誰かに損害を与えるトラブルとなれば、損害賠償請求を受けることもあります。他方で、適時に処分していれば、節税できる場合もあります。

空き家の管理や処分に困った場合、できるだけ早期に対策することが、管理費用の抑制につながります。

稲葉セントラル法律事務所では、岩手県盛岡市にもオフィスを構えており、地元の皆さまに全国水準のリーガルサポートをご提供いたします。

また、税理士や司法書士とも提携しているため、法律問題に加えて、税務や登記などの専門事項についても、ワンストップで総合的な士業サポートをご提供可能です。

空き家をどのように対処すればよいのかは、空き家の資産価値や状況によって異なります。よりよい方法で空き家対策ができるように、弁護士がアドバイスさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

 

 

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