空き家で火災が発生したら、所有者は責任を負う?空き家で火災が起きた場合の法的責任を弁護士が解説

1.はじめに

住宅・土地統計調査(総務省)によれば、空き家の総数は、この20年で1.8倍(448万戸→820万戸)に増加しています。そのため、近時、空き家の増加が重大な社会問題として認知されるようになり、空き家に関連する新しい法律が作られるとともに、空き家に関する報道も増えています。

中でも、空き家における火災が問題となっており、令和5年の盛岡市における空き家の火災件数は39件¹で、最近でも、11月15日午前、岩手県内で住宅1棟が全焼し、隣接する住宅少なくとも2棟に延焼する火事²がありました。

そこで、本記事では、空き家の火災について、発生原因や所有者の責任について解説します。

2.空き家が火事になる原因は?

放火

空き家の火災で一番多い原因として「放火」が挙げられます。

消防庁の調査では、令和2年に発生した2万件弱の火災のうち約4,000件が放火による火災と言われるほどで、住宅火災の約2割を放火が占めています。特に、空き家は人の目が届きにくいため狙われやすく、枯草やゴミなどが散乱している家も標的にされやすいと言われています。

タバコのポイ捨て

空き家火災の原因として挙げられるのが、タバコのポイ捨てによる火災などがあります。空き家は人が住んでいないため、敷地内にごみが不法投棄されることも多く、それらにタバコの火が引火して火災が発生します。

老朽化した電気設備

たとえば、ガス配管の劣化によるガス漏れも火災の原因1つにもなります。きちんとガスの供給を止めていないと配管の劣化部からガス漏れが発生する恐れがあります。

地方ならプロパンガスを使用していることも多く、プロパンガスは各住戸にガスボンベを設置するので、火災となった場合の規模が大きくなるというリスクもありますので注意が必要です。

またガス漏れ以外にも配線機器類の劣化も火災の原因となります。気付かないうち配線機器に劣化が進み、破損していることもあるため、空き家の場合も注意が必要です。

特に、家電をコンセントに差したままの状態で放っておくと、ほこりなどに引火し火災になる場合もあります。また、動物が原因のトラブルも少なくありません。

 

火災を防ぐには、定期的に空き家を訪問して、燃えやすいものを置かないように掃除したり、メンテナンスを行ったりすることが重要です。配線機器や給湯器が劣化していないか、修理の必要性などを確認しておきましょう。

また、空き家を火災から守るには、周囲に「管理されている空き家」だとアピールすることも大切です。たとえば、郵便ポストからあふれるほどチラシがつまっている家は人の気配を感じないため、放火や不法投棄の標的にされやすくなります。

チラシは定期的に回収するなどの管理ができれば望ましいですが、難しい場合は管理者がいることを門やフェンスに明示したり、玄関には人感センサーの照明をつけておくことが有効な対策になります。

放火は一般的に人目を避けて早朝や深夜に火をつけられることが多いため、ただでさえ人がいない空き家を守るためには人目を感じる状況をつくることが重要です。将来空き家を活用する予定がなければ、トラブルが起きる前に売却を検討することも考えられます。

3.空き家で火災が起きた場合の所有者の法的責任

上記の通り、空き家に関しては、所有者の管理が十分に行き届かないこともあり、不審者の侵入や放火の対象となるリスクが、管理者がいる居宅に比べて高い傾向にあります。

空き家において火災が発生し、隣家を延焼させてしまった場合、空き家の所有者はいかなる場合に責任を負うのでしょうか?失火責任法に基づく損害賠償請求について解説します。

① 失火責任法とは

「失火」とは、過失から火事を起こすことを言います。民法においては、故意又は過失によって第三者に損害を与えた者は、損害賠償責任を負うのが原則です(民法第709条)。しかし、失火に関しては、同条の特別法として、失火ノ責任ニ関スル法律(以下「失火法」とする)が定められています。

失火法によれば、失火者に重過失がある場合に、損害賠償責任を負わせることとしています。そのため、空き家で失火が発生した場合、所有者は、重過失が認められる場合に限り、損害賠償責任を負います。

(もっとも、後述するように、民法第709条以外に基づく不法行為責任との関係では例外もあります)。

② 重過失が認められる場合とは

判例によれば、失火法上の「重過失」とは、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたようなほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」をいいます(最判昭和32年7月9日民集11-7-1203)³。

重過失を認めた例として、以下のような判例があります。

    • ガスコンロの脇にインスタントラーメンの袋を置き、ガスコンロの火を消さずに放置したまま目を離したことにより火災を発生させた事例
    • ガソリンが入った瓶を、栓をしないまま燃焼中の石油ストーブ近くの足元に置いていたため、瓶が倒れてガソリンがストーブに引火し、火災を発生させた事例
    • 密閉状態に近い屋内で、点火中のストーブに近接して引火性の強い接着剤を使用した結果、火災を発生させた事例
    • 多数の木材が保管されている会社において、本件作業所内の一隅に設置された焼却炉の火が消火されずに残っていれば、火の粉が飛ぶなどして周囲の木材に燃え移り火災が発生する危険があることを容易に予見し得たにもかかわらず、焼却炉内の火を確実に消火せずに帰宅した被告会社の元代表者には失火責任法上の重過失があるとした事例
    • 中華料理店の厨房付近から発生した火災について、従業員がわずかの注意をすれば容易に発火の結果を予見でき、火災発生の防止措置が容易であったにもかかわらず同措置をとらなかったのは、漫然と見過ごしたものとして著しい注意欠如の状態であり、重過失にあたると判断された事例

③ 空き家の所有者に重過失が認められる場合は?

上記の重過失の意義や過去の判例に鑑みると、「空き家の漏電の可能性を指摘され、修理を依頼されていたにも関わらず放置した」、「可燃物や引火物があり、過去に小規模の火災が発生したにも関わらず、空き家を放置した」といったように、「空き家において火災が発生する可能性を容易に認識できたのに、なにも対策しなかった」というような場合に、空き家の所有者に重過失が認められるのではないかと考えます。

また、不良少年の倉庫内での火遊びによって発生した火災で延焼被害を受けた者が、倉庫の所有者に対して、民法709条及び失火責任法に基づいて損害賠償請求をした裁判例があります(那覇地判昭和50年6月28日判タ327-253)。

この判例では、倉庫の所有者に重過失はないと判断されましたが、建物や施設の管理に重過失がある場合には、第三者の行為が介在していても、失火について所有者が損害賠償責任を負う場合があり得る可能性があります。そのため、第三者のたばこのポイ捨てや放火によって発生した火災であっても、空き家の所有者に重過失が認められる可能性があります。

4.弁護士にご相談ください

国土交通省の調査によると、空き家のうち、その所有原因は約6割が「相続」です。空き家を相続しても、「空き家が遠方にある」、「相続人の中に住みたい人がいない」、「遺産分割が円滑に進まない」などの理由で、空き家を放置している方も多いと思います。しかし、空き家を放置していると、火災などの発生により、高額な賠償金を支払わなくてはならない危険があります。(空き家の相続について、詳細はこちらをご参照ください「空き家を相続するときの対処法は?相続放棄の手続きや相続する際の注意点などを弁護士が解説」

他方で、適時に処分していれば、節税できる場合もあります。空き家の管理や処分に困った場合、できるだけ早期に対策することが、管理費用の抑制につながります。

稲葉セントラル法律事務所では、岩手県盛岡市にもオフィスを構えており、地元の皆さまに全国水準のリーガルサポートをご提供いたします。

また、税理士や司法書士とも提携しているため、法律問題に加えて、税務や登記などの専門事項についても、ワンストップで総合的な士業サポートをご提供可能です。

遺産に空き家が含まれており、処分にお困りの方は、弁護士がアドバイスさせていただきますので是非お気軽にご相談ください。

¹盛岡市HP 空き地や空き家の火災予防について
²岩手めんこいチャンネル
³裁判所HP 裁判例結果詳細

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