SNS型投資・ロマンス詐欺とは?手口や犯罪の成否を弁護士が解説

1.はじめに

近時、架空の投資話を持ちかける「SNS型投資詐欺」と、恋愛感情などを抱かせ金銭をだまし取る「SNS型ロマンス詐欺」の被害が急増しています。

警察庁によると、令和6年1月から9月末までの全国のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は7,662件、被害金額は約974.3億円と、前年同期の認知件数(2430件)と被害額(262.6億円)を大幅に上回っており¹、深刻な被害が発生しています。

岩手県においても、令和6年1月から10月末までの認知件数が42件、被害額が3億1,820万円と、大きな被害が発生しています²。

SNS型投資・ロマンス詐欺の特徴として、まず、被害金額が高額であることがあげられます。岩手県における1件あたりの被害額の平均も750万円と非常に高額でした。

また、従来のオレオレ詐欺や振り込み詐欺の被害者は高齢者がほとんどでしたが、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者は40~60歳が6割以上を占めています³。

なぜ、金額が高額であるにも関わらず、だまされてしまう人が多いのでしょうか?本記事では、SNS型投資・ロマンス詐欺の手口や、犯罪に当たるのか否かなどについて解説します。

¹ 警察庁HP(令和6年11月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について)
²岩手県警察HP(SNS型投資・ロマンス詐欺発生情報)
³警察庁HP・前掲注1)3頁

2.手口について

(1) SNS型投資詐欺

「SNS型投資詐欺」とは、SNSで暗号資産や株に投資すれば利益が得られるかのように誤信させて、金銭を騙し取る詐欺の手口です。代表的な手口は、以下のような流れで、行われます。

    1. InstagramやX(旧ツイッター)に著名人の名前・写真を悪用した嘘の投資広告や、「必ずもうかる投資方法を教えます」などのメッセージが来たことをきっかけに、LINEのグループチャットに招待する。
    2. 投資に関するやり取りを行い、投資アプリや投資サイトに誘導する。
    3. 少額の金銭を支払わせ、アプリ等の画面上では嘘の利益を表示させ「実際に利益が出ている」と勘違いをさせる(振込先口座は、個人だけでなく法人の場合もあります)。
    4. 偽の投資を継続させながら、さらなる利益のため増資を募ったり、利益を引き出すための「手数料」として、高額な金銭を要求する。

 

上記のような流れの中で、最初の投資の利益として実際に現金が自分の口座に振り込まれたり、アプリ上では「2,000万円以上の利益が出ている」と表示されていることから、「投資に成功している」、「自分がやり取りしている人物は信用できる」と思い込んでしまい、100万円、200万円という多額の金額を犯人に振り込んでしまいます。

そのため、1件当たりの被害金額が高額となり、中には、1億円以上の被害に遭ったケースもあります。

投資詐欺の被害が増加する要因の一つとして、投資への関心が高まっていることが挙げられます。

投資に関するLINEのトークグループなどに招待されても、自分以外の参加者は、全員詐欺グループのメンバー(いわゆるサクラ)の可能性が高いといえます。金銭の振り込みを求められたら、投資先が実在しているか、国の登録業者かどうかを確認することが大切です。

 

(2) SNS型ロマンス詐欺

「SNS型ロマンス詐欺」とはSNSやマッチングアプリなどを通じて出会った者と、実際に直接会うことなくやりとりを続けることで恋愛感情や親近感を抱いてしまい、金銭等をだまし取られてしまう詐欺をいいます¹。

主な手口としては、まず、マッチングアプリだけではなく、InstagramなどのSNSやオンラインゲームまたは言語学習アプリなど、様々なプラットフォームを通じてやりとりを始め、メッセージや電話やビデオ通話などを通じて被害者との信頼関係を深めます。その後、「会いに行くための飛行機代」、「緊急手術のための費用」、「二人の結婚資金のために投資をしたい」などの様々な理由で金銭を要求し、相手に振り込ませます。

また、「儲かる投資があるから一緒にやらない?」と、投資の名目で金銭を要求したり、投資詐欺のグループに繋げたりするケースもあります。

ロマンス詐欺では、すぐに金銭要求を実行するのではなく、1年以上恋人のようなやりとりを行い、信頼関係を構築した後に初めて金銭を要求するケースも少なくありません。そのため、「相手と恋人関係である」、「もうすぐ結婚してくれる」と信じてしまい、数十万円を何度も送金してしまい、被害金額が多くなってしまうというという背景があります。

¹警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ SNS型ロマンス詐欺

3.犯罪は成立するのか?

犯罪が成立するのかを考える上で、詐欺罪(刑法246条1項)が考えられます。この点、詐欺罪(刑法246条1項)が成立するためには、①犯人の欺罔行為(人を欺く行為)、②相手方が錯誤に陥ること、③錯誤に基づいて財産を交付する行為があること、④犯人に財産が移転したことが必要です。

SNS型詐欺の多くの場合に当てはめてみると、以下の様に考えられます。

    1. 犯人が、実際はそんな目的はないにも関わらず、「投資のために100万円振り込んでください」、「会いに行くための渡航費用として50万円欲しい」と相手(被害者)に告げている(欺罔行為)がある。
    2. 相手方(被害者)が、「振り込んだら投資をすることができる」、「会いに来てくれる」と思い込んでしまう(錯誤に陥る)
    3. 実際に要求された金銭を振り込んでしまう(錯誤に基づく交付行為)。
    4. 犯人の口座に金銭が振り込まれる(財産の移転)

個別の事案にもよりますが、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺の多くの場合は、4つの要件を満たして、詐欺罪が成立する可能性があります。

 

4.お金は返ってくるのか?

SNS型投資詐欺やロマンス詐欺は、相手が架空の人物、または外国人であります。そのため、相手方を特定することが極めて困難であり、詐欺罪に当たるとしても、警察が捜査して逮捕することは難しい可能性があります。

刑事手続きではなく、民事手続で犯人からお金を返してもらうという方法も考えられます。

しかし、犯人が使用する振込先口座は、詐欺のために第三者から買い取ったものが利用されていることがあり、加害者を特定できない可能性があります。

また、被害金が振り込まれた口座の持ち主を特定できたとしても、口座所有者は口座を何らかの理由で渡しただけであり、詐欺に関与しておらず、被害金の行方について何も知らない可能性があります。

そのため、詐欺の被害に遭ったとしても、残念ながら損害の回復を望むことは難しい可能性があります。

5.最後に

詐欺の手口は非常に巧妙であり、SNSやマッチングアプリがあらゆる世代に浸透した現在、誰もが被害に遭う可能性があるといえるでしょう。

このような詐欺の被害に遭わないためには、詐欺の手口を知っておくことが重要です。岩手県警のHPにおいて、岩手県内のSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の発生状況や被害の概要が確認できるため、ぜひ併せてご参照ください。

どんな状況でも、金銭の振込やプリペイドカードの入金を求められたら、詐欺を疑うべきです。被害に遭ってしまった後に被害額を回収することは難しいため、早めに周りの人や警察に相談しましょう。

被害額を取り戻すために弁護士に相談する場合も注意が必要です。東京弁護士会より、投資詐欺やロマンス詐欺の被害回復に関して、注意喚起をしているものもあります[5]

ロマンス詐欺等の被害に遭われ、被害の回復を弁護士に依頼する方は、依頼する予定の弁護士から、事件処理の進め方、被害回復の可能性を含めた見通し、これらを踏まえた着手金・報酬金の妥当性について十分な説明を受けた上で、依頼するか否かを慎重に検討しましょう。

参照1:マッチングアプリでロマンス詐欺、488万円被害 紫波の30代男性(岩手日報、2024.09.26)
参照2:(NHK 岩手NEWS WEB、2024.08.02)県内の70代女性 ロマンス詐欺で1360万円被

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