飲酒運転の懲役刑の相場と実刑・執行猶予を分ける基準を解説

飲酒運転では罰金刑だけでなく懲役刑が科されることがあります。「実刑になるのか執行猶予になるのか」という点は当事者にとって最も関心の高い問題のひとつです。この記事では飲酒運転の懲役刑の相場・酒気帯びと酒酔いの量刑の違い・実刑と執行猶予を分ける基準・減刑の可能性について解説します。

飲酒運転の懲役刑の相場

飲酒運転の懲役刑の相場は事故の有無・被害の程度・前科の有無・飲酒の程度によって大きく異なります。物損事故なし・軽微な飲酒・初犯であれば罰金刑で終わることが多いですが事故あり・重傷・死亡・前科ありのケースでは懲役刑が科されます。

物損事故なし・初犯のケースでは罰金刑(30〜50万円程度)が相場であり懲役刑が科されることは比較的少ないです。しかし過去に飲酒運転の前歴・前科がある場合は初犯でも懲役刑が検討されることがあります。

人身事故を伴う飲酒運転の懲役刑の目安として、軽傷・初犯・示談成立のケースでは執行猶予付き懲役1〜2年程度・重傷・後遺障害ありのケースでは懲役1〜5年程度(実刑の可能性あり)が目安とされています。死亡事故・危険運転致死罪が適用される場合は懲役5〜20年程度の重い実刑が科されることがあります。

実際の量刑は事案ごとの事情によって大きく異なるため弁護士に個別に相談することが重要です。

酒気帯びと酒酔いで異なる量刑

飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があり、それぞれ法定刑・実際の量刑が異なります。

酒気帯び運転(道路交通法117条の2の2)の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。事故なし・初犯のケースでは略式命令による罰金刑(30〜50万円程度)で終わることが多く懲役刑が科されるケースは比較的少ないです。しかし事故あり・前科あり・常習的な飲酒運転のケースでは懲役刑が科されることがあります。

酒酔い運転(道路交通法117条の2)の法定刑は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。酒気帯び運転より法定刑が重く事故なし・初犯でも罰金ではなく懲役刑(執行猶予付き)が科されることがあります。酒酔い運転は「正常な運転ができない状態」であるため悪質性が高いと評価されます。

いずれの場合も飲酒運転に加えて事故・無免許・逃走などの事情が加わると量刑が大幅に重くなります。

実刑と執行猶予を分ける4つの基準

懲役刑が科される場合でも実刑(実際に服役する)になるか執行猶予付き(猶予期間中は服役不要)になるかは大きく異なります。執行猶予がつくかどうかは様々な事情を総合的に判断して決定されます。執行猶予を分ける4つの主な基準を解説します。

  • 事故の有無と被害の程度
  • 前科・前歴の有無
  • 示談の成立と被害者との関係
  • 反省の態度と再犯防止への取り組み

事故の有無と被害の程度

実刑か執行猶予かを決める最も基本的な基準のひとつが「事故の有無と被害の程度」です。飲酒運転で死亡事故・重傷事故を起こした場合は実刑になる可能性が大幅に高まります。

軽傷事故(全治2〜4週間程度)で初犯・示談成立というケースでは執行猶予付き判決になることが多いです。一方、死亡事故・後遺障害が残る重傷事故では実刑判決が下されるケースが増えます。複数の被害者が生じた場合・危険運転致死傷罪が適用された場合は実刑の可能性がさらに高まります。

ひき逃げが加わった場合は「被害者を見捨てた」という悪質性が加重事由として評価されるため同じ被害の程度でも実刑になりやすくなります。事故の態様(飲酒量・速度・運転状況)も悪質性の評価に影響します。

前科・前歴の有無

飲酒運転・交通事故の前科・前歴の有無は実刑か執行猶予かを分ける重要な基準です。飲酒運転の前科がある場合は同種の犯罪を繰り返したとして再犯として評価されるため実刑になりやすくなります。

刑法25条は「3年以下の懲役または禁錮の言い渡しをする場合に情状を考慮して刑の執行を猶予することができる」と規定しています。ただし過去に禁錮以上の刑に処せられたことがある者に対しては執行猶予が認められにくくなります。前科のある被告人に執行猶予を認めるには特別な事情が必要です。

前科・前歴がなく初犯であることは執行猶予を得るための重要な条件です。初犯であれば裁判官が執行猶予を認めやすい傾向があります。弁護士が「初犯である」という点を情状として積極的に主張することが執行猶予を得るための重要な活動となります。

示談の成立と被害者との関係

示談が成立しているかどうかは実刑か執行猶予かを分ける最も重要な要素のひとつです。被害者が加害者を許し民事上の賠償問題が解決したという事実は裁判官の量刑判断に非常に大きく影響します。

示談が成立した場合は「被害が実質的に回復された」「被害者が加害者の反省を認めた」という評価につながり執行猶予が認められやすくなります。特に人身事故の飲酒運転では示談の成立が執行猶予を得るための最も重要な条件のひとつとなります。

一方、示談が成立していない場合は「被害が回復されていない」「被害者が処罰を強く求めている」という事情が実刑を支持する方向に働きます。弁護士が早期に示談交渉を開始して示談を成立させることが執行猶予を得るための最も直接的な活動です。逮捕直後から弁護士に依頼して示談交渉を速やかに進めることが重要です。

反省の態度と再犯防止への取り組み

被告人が心から反省しているかどうか・再犯防止のための具体的な取り組みを行っているかどうかも実刑か執行猶予かを左右する重要な要素です。

裁判官は被告人の反省の程度・再犯可能性・社会復帰後の生活環境などを総合的に評価して量刑を決定します。公判での被告人の態度・謝罪の言葉・被害者への賠償の実施などが反省の態度を示すものとして評価されます。

飲酒運転の場合、アルコール依存症の専門機関での治療開始・断酒の誓約・飲み会時の代替交通手段の確保など具体的な再犯防止策を示すことが重要です。また家族・職場のサポート体制・地域社会とのつながりなど「釈放後の監督体制が整っている」という事情も執行猶予を認める方向に働きます。弁護士が効果的な情状立証を行うことでこれらの事情を最大限に活用することができます。

飲酒運転の減刑は可能なのか

飲酒運転で起訴された場合でも弁護士の活動によって量刑(懲役の年数)を軽減することは可能です。弁護士による情状立証・示談交渉・弁護活動全般が減刑に影響します。

まず「危険運転致死傷罪か過失運転致傷罪か」という罪名の選択に対して弁護士が争うことで法定刑の上限が大きく変わります。危険運転致死傷罪(最大20年懲役)ではなく過失運転致傷罪(最大7年懲役)での処理が実現すれば量刑が大幅に軽減されます。

次に示談の成立・被害弁償・反省の態度・再発防止策の実施など情状立証によって執行猶予の取得または懲役の年数の軽減を目指します。弁護士が適切な情状立証を行うことで同じ事案でも量刑が大きく変わることがあります。

なお刑事訴訟の確定判決後でも「恩赦」「仮釈放」という制度があります。刑が確定した後も服役中に反省の態度が認められれば仮釈放によって刑期満了前に釈放されることがあります。減刑の可能性を最大化するためには逮捕直後から弁護士に依頼して最善の弁護方針を立てることが重要です。

まとめ

飲酒運転の懲役刑は事故なし・初犯では罰金刑が多いですが事故あり・死亡・前科ありの場合は懲役実刑が科されることがあります。酒酔い運転は酒気帯び運転より量刑が重い傾向があります。実刑と執行猶予は事故の程度・前科・示談の成立・反省の態度の4つが主な判断基準です。弁護士に依頼して情状立証・示談を進めることで執行猶予・減刑の可能性が高まります。

監修者情報
浜宮 健太 弁護士
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所 自由が丘オフィス 支店長
浜宮 健太 弁護士
東京弁護士会所属 / 犯罪被害者支援委員会(東京弁護士会)

検察官から弁護士へ転身。「弱い立場の人を支え、より良い社会を」をモットーに、刑事事件・犯罪被害者支援を中心に活動。何が問題で、手続きがどう進むのか、不安を一つひとつ解消し、共に問題解決していくことをお約束します。

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監修・執筆
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所

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