「当て逃げをしてしまったが時効はいつか」「自首しないで逃げ続けられるのか」という疑問を持つ方がいますが、当て逃げも刑事犯罪です。物損のみの場合でも公訴時効が存在し逃げ続けることには様々なリスクが伴います。この記事では、当て逃げの公訴時効・民事時効・自首の影響・時効を待つリスクについて解説します。
当て逃げの公訴時効は何年か
当て逃げとは交通事故によって他人の車・建物・物品などに損害を与えながら危険防止措置や警察への報告を怠って現場を離れる行為です。道路交通法72条が定める危険防止措置義務・報告義務に違反した場合は刑事犯罪として処罰されます。
物損のみの当て逃げに適用される主な罪は「危険防止措置義務違反(道路交通法117条の5)」(1年以下の懲役または10万円以下の罰金)と「報告義務違反(道路交通法119条)」(3か月以下の懲役または5万円以下の罰金)です。これらの罪の法定刑は長期5年未満の懲役であるため、公訴時効は3年となります。
公訴時効の3年間は「犯罪行為が終わった時」から起算されます。当て逃げの場合は事故を起こして現場を離れた時点から時効が進行します。3年以内に起訴されなかった場合に公訴時効が完成しますが時効の完成前に発覚・起訴されれば刑事罰を受けることになります。防犯カメラやドライブレコーダーが普及した現代では3年間逃げ切ることは非常に困難です。
傷害や器物損壊の有無で異なる時効期間
当て逃げは事故の状況によって適用される罪名と公訴時効が異なります。物損のみの場合は公訴時効3年ですが、傷害が伴った場合や器物損壊が加わった場合は時効期間が変わることがあります。
当て逃げの後に「実は被害者が軽傷を負っていた」ということが後から判明した場合、単純な物損のひき逃げではなく傷害を伴うひき逃げとして扱われます。この場合は救護義務違反(10年以下の懲役または100万円以下の罰金)が適用されるため公訴時効は7年程度となります。また過失運転致傷罪も競合して適用されることがあります。
器物損壊罪(刑法261条)は「故意に他人の物を損壊した場合」に適用されます。当て逃げの場合は通常は過失による物損であるため器物損壊罪ではなく道路交通法違反の問題となりますが、悪意を持った行為(故意の衝突など)では器物損壊罪が適用されることがあります。器物損壊罪の公訴時効も3年です。
損害賠償の時効について(民事事件の時効)
当て逃げの刑事上の公訴時効とは別に、被害者からの民事上の損害賠償請求にも時効があります。民法724条は被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないと時効によって消滅すると規定しています。また不法行為の時から20年経過した場合も消滅します。
物損のみの当て逃げの場合は「財産的損害に基づく損害賠償」であるため通常3年の消滅時効が適用されます。ただし加害者が不明の場合は「加害者を知った時から3年」の時効カウントが始まらないため、逃亡が長期間続くほど民事上の責任が長く続くことになります。
刑事の公訴時効(3年)と民事の損害賠償請求の時効は別々に進行します。刑事の時効が完成した後でも民事上の損害賠償請求を受ける可能性があり、加害者不明の間は時効カウントが始まらないため逃亡が長いほど民事上の責任が続きます。弁護士への早期相談によって刑事・民事両面での対応方針を立てることが重要です。
当て逃げで自首した場合の時効への影響
自首をしても公訴時効の進行には直接影響しません。時効を止めるのは「起訴」のみであり自首自体では時効の進行を止めることはできません。
自首が捜査の開始・起訴につながることで時効完成前に起訴されて処罰を受けることになります。量刑の観点では自首は大きな意味を持ち、刑法42条の規定により処分が軽減される可能性があります。
当て逃げ事案における自首は特に重要な意味を持ちます。道路交通法72条の報告義務は「事故を起こした直後に警察に報告すること」を求めており逃亡後に自首した場合でも遅延報告として評価されます。ただし逃亡せずに速やかに自首した場合と数日・数週間後に自首した場合では処分の評価が大きく異なります。
当て逃げで時効が完成する前に自首することで、初犯・物損のみ・示談成立という条件が揃えば不起訴処分になることがあります。「今から自首しても意味がない」という考えは誤りであり弁護士に相談した上で速やかに自首することが最善策です。
当て逃げを起こして時効を待つリスク
当て逃げを起こして逃亡し時効の完成を待とうとすることは多くのリスクを伴います。公訴時効は3年と比較的短いものの防犯カメラ・ドライブレコーダーが普及した現代では発覚するリスクが高く「3年逃げ切れる」可能性は低いです。発覚した際の処分の重さ・民事上の請求・精神的な負担が続くことも理解しておく必要があります。3つのリスクを解説します。
- 発覚した場合に刑事罰が重くなるリスク
- 民事上の損害賠償請求が続く
- 精神的・社会的な負担が続く
発覚した場合に刑事罰が重くなるリスク
当て逃げを起こして逃亡した場合、発覚するタイミングと方法によって処分が大きく変わります。自首した場合と後から強制的に発覚した場合では反省の態度の有無・捜査への協力姿勢の評価が異なります。後から発覚した場合は「反省の態度がない」「自ら申告しなかった」という事情が加重事由として考慮されることがあります。
防犯カメラ・ドライブレコーダー映像・車両のナンバー・目撃者の証言などから後日特定されるケースが非常に多く「逃げ切れる」という見込みは甘いです。特に駐車場での当て逃げは防犯カメラの映像が記録されていることが多く後日の発覚につながりやすいです。
発覚した場合の手続きとして警察からの呼び出し・任意出頭・逮捕のいずれかの形で対応が求められます。逮捕された場合は職場・家族への影響が大きくなります。後から発覚するくらいなら早期に自首した方が処分が軽くなることが多いため「逃げ得」という考えは持たないことが重要です。
民事上の損害賠償請求が続く
当て逃げで被害者の車・建物・物品に損害を与えた場合、被害者からの民事上の損害賠償請求が続きます。逃亡中は被害者への賠償が行われていないため被害者は被害の全額を自分で負担するか自分の保険を使うことになります。
自分の保険を使った被害者の保険会社は後から加害者が判明した場合に求償請求(代わりに支払った費用の回収請求)を行うことがあります。また被害者が直接民事訴訟を提起することも可能です。逃亡中に財産がある場合は差押えによって賠償に充てられることがあります。
刑事の公訴時効(3年)が完成した後でも加害者が不明の場合は民事時効のカウントが始まらないため加害者が特定された後に損害賠償請求を受けることがあります。逃亡が長期間続くほど遅延損害金が加算されて賠償金が増大する可能性もあります。早期に自首して示談を成立させることが民事上の問題を解決する最善策です。
精神的・社会的な負担が続く
当て逃げを起こして逃亡し続けることで「発覚するかもしれない」という不安・後ろめたさが常に続きます。物損のみの軽微な事故であっても「警察に呼ばれるかもしれない」「相手に気づかれたかもしれない」という不安は日常生活に影響を及ぼします。
公訴時効が完成する3年間にわたってこの不安が続くことは精神的に非常に消耗します。特に同じ場所を通るたびに事故を思い出す・車を運転するたびに後ろめたさを感じるという状態が続くことがあります。軽微な事故であっても隠蔽し続けることは精神的な負担をもたらし続けます。
早期に自首して被害者への謝罪・賠償を行い問題を解決することで精神的な負担から解放されます。当て逃げの物損のみのケースでは弁護士のサポートを受けることで不起訴処分を目指すことができるため、自首することで前科もつかずに問題を解決できる可能性が十分にあります。「今さら自首しても遅い」という思い込みを捨てて早期に行動することが最善策です。
まとめ
当て逃げの公訴時効は物損のみの場合3年ですが、傷害が伴う場合はひき逃げとして扱われ時効が延びます。民事上の損害賠償請求は刑事時効とは別に存在するため加害者不明の場合は時効が始まらないこともあります。自首は時効を止めませんが処分の軽減に有利に働きます。発覚リスクが高い現代では逃げ続けるよりも早期に弁護士に相談して自首することが最善策です。