当て逃げで示談できるかどうかの判断軸と示談交渉の流れ・示談金の相場

当て逃げ事件においても示談交渉は被疑者にとって重要な意味を持ちます。示談が成立することで不起訴処分の可能性が高まり民事上の損害賠償問題も解決します。この記事では、当て逃げで示談できるかどうかの判断軸・示談交渉の流れ・示談のメリット・示談金の相場について解説します。

当て逃げで示談できるかどうかの判断軸

当て逃げ事件で示談ができるかどうかは事故の状況・被害の程度・被害者の意向などによって異なります。ひき逃げ(人身事故)と異なり物損のみの当て逃げは示談が成立しやすいケースが多いですが、逃亡したことへの被害者の怒りが障壁になることがあります。以下の表に主な判断軸をまとめました。

判断軸 示談成立の可能性が高い 示談成立が難しい
被害の程度 軽微な損傷(バンパー傷など) 全損・高額修理が必要
被害者の意向 賠償さえしてくれれば示談に前向き 被害者が強く刑事処罰を求める
加害者の誠意 早期に謝罪・全額賠償に積極的 誠意が見られない・賠償を渋る
逃亡の期間 逮捕後すぐに謝罪・弁護士を依頼 逃亡が長期間・発覚まで時間が経過
前科・前歴 なし 同種の前科あり
保険の有無 任意保険で賠償可能 無保険・賠償能力に疑問がある

示談が成立するかどうかは被害者側の意向と加害者の誠実な対応が最も重要です。物損のみのケースでは被害者が「全額賠償してくれるなら刑事処罰は求めない」という姿勢をとることが多く、適切な賠償金の提示と誠実な謝罪が示談成立の鍵となります。また保険を活用して確実に賠償できることを示すことも被害者の安心感につながります。

当て逃げ事件の示談交渉の流れ

当て逃げ事件の示談交渉は物損のみのケースが多いためひき逃げと比べて被害者感情が落ち着きやすく比較的スムーズに進むことがあります。ただし逃亡したことへの怒りが障壁になるケースもあります。弁護士が代理人として誠実に交渉を進めることで適切な賠償条件での示談成立を目指します。4つのステップで解説します。

  • 弁護士への依頼と被害者の連絡先取得
  • 被害者への謝罪と交渉の開始
  • 示談条件の交渉と示談書の作成
  • 示談成立後の手続き(告訴取り下げなど)

弁護士への依頼と被害者の連絡先取得

当て逃げ事件での示談交渉はまず弁護士に依頼することから始まります。加害者が直接被害者に連絡することは感情的なトラブルに発展するリスクがあるため弁護士が代理人として交渉を進めることが原則です。

弁護士は捜査機関を通じて被害者側の連絡先を取得します。在宅捜査の場合も逮捕・勾留中の場合も弁護士が適切な手続きで被害者側と連絡をとります。なお当て逃げの場合は車両保険・賠償責任保険が関係することがあり保険会社との折衝も必要になる場合があります。

加害者が任意保険に加入している場合は保険会社が示談交渉を代行することがあります。ただし保険会社の担当者は保険会社の利益を優先することがあるため刑事処分の観点では弁護士が別途対応することが重要です。示談金の支払いに保険を使う場合でも弁護士に相談して刑事・民事両面での最善の対応をとることが大切です。弁護士と保険会社が連携することで効率的な解決が可能になります。

被害者への謝罪と交渉の開始

弁護士が被害者側と連絡をとることができた場合まず加害者からの謝罪の意を伝えます。当て逃げは物損のみであっても「事故を起こしておきながら逃げた」という行為への被害者の怒りは大きいです。誠実な謝罪なしに賠償金の交渉を始めることは逆効果になることがあります。

弁護士は被害者の怒りを十分に受け止めながら加害者の反省と誠実な賠償の意思を伝えます。被害者が「賠償さえしっかりしてくれれば刑事処分は求めない」という姿勢をとる場合は比較的スムーズに示談交渉が進みます。

当て逃げの場合、被害者の主な関心は「車の修理費が全額払われるか」「代車費用は出るか」「精神的苦痛への慰謝料はあるか」といった点です。これらについて誠実に対応する姿勢を示すことで被害者が示談に前向きになることがあります。弁護士が具体的な賠償の見通しを示しながら丁寧に交渉することが示談成立につながります。

示談条件の交渉と示談書の作成

示談交渉が進むと示談金の金額・支払い方法・告訴の取り扱い・再発防止の約束などの具体的な条件交渉が行われます。当て逃げの示談金は主に修理費・代車費用・逃亡による精神的苦痛への慰謝料で構成されます。弁護士は被害者側の要求内容を確認しながら適切な金額での合意を目指します。

示談金の算定においては車両の修理費(整備士の見積もりが基準)・代車が必要だった期間の費用・逃亡によって被害者が精神的苦痛を受けたことへの慰謝料などが考慮されます。加害者の保険で対応できる範囲と自己負担の範囲を整理した上で示談金の提示額を決めます。

条件が合意されたら示談書を作成します。示談書には示談金の金額・支払い期限・告訴の取り扱い・民事上の権利の清算(清算条項)などを明記します。示談書は法的拘束力のある書類であるため弁護士が内容を精査した上で署名・押印を行います。

示談成立後の手続き(告訴取り下げなど)

示談が成立した後は示談の内容に応じて各種の手続きが行われます。被害者が刑事告訴を行っていた場合は示談書に告訴取り下げの条項を含めることで被害者が告訴を取り下げることができます。告訴が取り下げられることで不起訴になりやすくなります。

弁護士は示談書と告訴取り下げ書を検察官に提出して不起訴処分を求める意見書とともに提示します。当て逃げの物損のみのケースでは示談が成立した場合に不起訴処分になる可能性が比較的高いです。不起訴になれば前科がつかず罰金の支払いも不要になります。

なお示談成立後も刑事手続きが継続することがあります。しかし示談が成立していることは不起訴・罰金額の軽減において重要な情状として考慮されます。示談書に清算条項が盛り込まれることで後からの追加請求を防ぐことができます。示談成立後の刑事手続きについても弁護士と連携して対応することが重要です。

示談できた場合の4つのメリット

当て逃げ事件で示談が成立した場合、刑事処分・民事問題の解決・被害者との関係修復など様々な面でメリットがあります。当て逃げは物損のみのケースが多いため示談が成立すれば不起訴処分になる可能性が比較的高く前科をつけずに問題を解決できることがあります。弁護士を通じた早期の示談成立が最善策です。4つのメリットを解説します。

  • 不起訴・起訴猶予につながる可能性がある
  • 罰金・処分が軽減される可能性がある
  • 民事上の損害賠償問題が解決する
  • 精神的な問題から早期に解放される

不起訴・起訴猶予につながる可能性がある

示談が成立することで被害者が「加害者の刑事処罰を求めない」という意思を示すことになります。当て逃げは物損のみのケースが多く人身事故に比べて示談成立後に不起訴処分になる可能性が相対的に高いです。検察官は被害者の意向を重視するため示談の成立は不起訴の可能性を高めます。

特に初犯・軽微な物損・逃亡期間が短い・示談が速やかに成立というケースでは起訴猶予(不起訴処分の一種)になる可能性があります。不起訴になれば前科がつかず罰金の支払いも不要です。弁護士が示談書と不起訴を求める意見書を合わせて検察官に提出することで不起訴の可能性を最大化することができます。

当て逃げの物損のみのケースは人身事故のひき逃げと比べて処分が軽くなりやすいです。示談成立・不起訴という結果を目指すためにも逮捕直後から弁護士に依頼して速やかに示談交渉を開始することが重要です。

罰金・処分が軽減される可能性がある

起訴されてしまった場合でも示談の成立は量刑判断において重要な情状として考慮されます。当て逃げの物損のみのケースで示談が成立した場合、罰金刑の金額が軽減される・執行猶予付き懲役になる可能性が高まります。

当て逃げの法定刑は物損のみの場合1年以下の懲役または10万円以下の罰金程度が上限であり人身事故のひき逃げと比べて処分の幅が狭いです。示談が成立することでさらに処分が軽くなる可能性があります。初犯・示談成立・反省の態度が明確というケースでは略式命令による罰金または不起訴という結果が期待できます。

弁護士が効果的な情状立証を行うことで示談成立の事実を最大限に活用した弁護を展開することができます。示談書の提示に加えて加害者の反省の態度・再発防止策・社会復帰への取り組みなどを合わせて示すことでより有利な処分結果につながります。当て逃げの軽微な事案では示談成立が処分の軽減に最も大きく影響します。

民事上の損害賠償問題が解決する

示談が成立することで被害者からの民事上の損害賠償請求問題が解決します。示談書には通常「民事上の問題は示談金の支払いをもってすべて解決した(清算条項)」という内容が盛り込まれるため示談金の支払い後は被害者からの追加請求を防ぐことができます。

当て逃げの場合は車両修理費・代車費用・慰謝料などが示談金の主な内訳です。これらを示談書で合意した上で支払うことで後から「修理したら予想より高くなった」「慰謝料が足りない」といった追加請求のリスクを排除することができます。清算条項の内容については弁護士が精査することが重要です。

示談が成立していない場合は民事訴訟を提起される可能性があります。民事訴訟では示談交渉よりも手続きが長期化し弁護士費用・時間・精神的な負担が増大します。また民事訴訟で敗訴した場合の損害賠償額は示談金より高くなることがあります。早期の示談成立が民事上のリスクを最小化する最善策です。

精神的な問題から早期に解放される

示談が成立することで「まだ示談できていない」「被害者が怒っている」という精神的な不安から解放されます。当て逃げを起こした後に逃亡を続けたり示談が成立しなかったりすることで「いつ問題が解決するのか」という不安が長く続くことがあります。

示談が成立することで被害者との問題が解決し精神的な区切りをつけることができます。「誠実に対応して問題を解決した」という達成感が精神的な回復を助けることがあります。またひき逃げ(人身事故)とは異なり当て逃げは物損のみであるため示談が成立しやすく問題の解決が比較的早期に実現することがあります。

さらに示談が成立した上で不起訴処分になった場合は前科もつかず日常生活への影響を最小限に抑えることができます。逮捕・起訴という最悪のケースを回避して早期に社会復帰できるという観点でも示談成立は精神的・生活的な安定に大きく貢献します。

当て逃げにおける示談金の相場

当て逃げ事件の示談金は被害の種類・程度によって大きく異なります。主に「物的損害の賠償」と「逃亡による慰謝料」で構成されます。ひき逃げ(人身事故)と比べて金額は低くなりますが逃亡したことへの慰謝料が加算されることがあります。以下の表に目安をまとめました。

被害の種類 示談金の目安 主な内訳
軽微な車両損傷(バンパー・塗装傷) 5〜30万円程度 修理費・塗装費
中程度の車両損傷(パネル交換など) 30〜80万円程度 修理費・代車費用
全損(修理不能・廃車扱い) 100〜200万円程度 車両の時価相当額・代車費用
建物・フェンス・ガードレール等 10〜100万円程度 修理費・復旧費用
逃亡による精神的苦痛(加算) 5〜30万円程度 逃亡したことへの慰謝料

実際の示談金は被害者の要求・車両の時価・修理業者の見積もりなどによって変わります。弁護士に相談することで適切な金額の算定・被害者との交渉・示談書作成まで一括してサポートしてもらうことができます。示談金の提示が低すぎると被害者の怒りを招きますが高すぎると加害者の負担が過大になります。弁護士を通じた適切な金額設定が示談成立の鍵です。

まとめ

当て逃げ事件の示談は物損のみのケースが多いためひき逃げ(人身事故)と比べて成立しやすい傾向があります。示談が成立することで不起訴・罰金の軽減・民事問題の解決・精神的な解放というメリットがあります。示談金は車両損傷の規模によって5万円〜200万円程度の幅があります。弁護士を通じた誠実な交渉が示談成立への最善の方法です。

監修者情報
浜宮 健太 弁護士
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所 自由が丘オフィス 支店長
浜宮 健太 弁護士
東京弁護士会所属 / 犯罪被害者支援委員会(東京弁護士会)

検察官から弁護士へ転身。「弱い立場の人を支え、より良い社会を」をモットーに、刑事事件・犯罪被害者支援を中心に活動。何が問題で、手続きがどう進むのか、不安を一つひとつ解消し、共に問題解決していくことをお約束します。

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監修・執筆
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所

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