当て逃げの刑罰は事故の状況・被害の程度・逃亡の期間などによって大きく異なります。物損のみの軽微なケースから傷害・死亡が伴うケースまで適用される法律と量刑の幅は非常に広いです。罰金・懲役・免許処分が同時に科される場合もあります。この記事では当て逃げの刑罰の相場・不申告の量刑・罰金の目安・被害の程度別の違いについて解説します。
当て逃げの刑罰と量刑相場
当て逃げには主に「危険防止措置義務違反」と「報告義務違反」の2つの犯罪が成立します。事故の結果に応じて適用される罪名が変わり量刑も大きく異なります。また当て逃げは刑事処分に加えて行政処分(免許停止・取消)も科されることがあります。以下の表に主な罪名と法定刑をまとめました。
| 罪名 | 主な適用場面 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 危険防止措置義務違反(道交法117条の5) | 物損事故後に危険防止措置をとらずに逃走 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
| 報告義務違反(道交法119条) | 事故を警察に報告しなかった | 3か月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
| 器物損壊罪(刑法261条) | 故意に他人の物を損壊した場合(悪意ある衝突など) | 3年以下の懲役または30万円以下の罰金・科料 |
| 救護義務違反(道交法117条) | 人を死傷させた場合に救護しなかった | 10年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 過失運転致傷罪(自動車運転処罰法5条) | 過失により人を傷害した(人身事故に発展した場合) | 7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死罪(自動車運転処罰法2条) | 危険な運転で人を死亡させた | 1年以上20年以下の懲役 |
物損のみの当て逃げでは刑事処分として略式命令による罰金刑が科されることが多いですが事故の規模・前科・逃亡期間によっては懲役刑になることがあります。刑事処分とは別に行政処分として免許の違反点数加算・免許停止・免許取消が科されることがあります。弁護士に依頼することで不起訴処分・罰金額の軽減を目指すことができます。
不申告と道路交通法違反の量刑
道路交通法72条は事故を起こした場合に「危険防止措置(負傷者の救護・道路の危険防止)」と「警察への報告(事故の届け出)」を義務付けています。当て逃げはこの義務に違反した場合に成立する犯罪です。
不申告(報告義務違反)単体は道路交通法119条が適用され「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」という比較的軽い法定刑です。ただし報告義務違反のみが問われるケースは少なく危険防止措置義務違反と合わせて処罰されることが一般的です。
事故後に危険防止措置をとらずに逃走した場合は道路交通法117条の5が適用され「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。これが当て逃げに最も基本的に適用される罰則です。不申告と危険防止措置義務違反が競合した場合は両方の罪が認定されることがあります。
実際の量刑では複数の罪が競合して認定されることがあるため処分が重くなることもあります。自分の事案に適用される罪名について弁護士に確認することが重要です。
当て逃げによる罰金の目安
当て逃げの刑事処分として罰金刑が科される場合があります。罰金刑は「略式命令」という書面審理のみの手続きで決定されることが多く法廷に出廷することなく書面で罰金の納付を求められます。罰金を納付することで刑事手続きは終了しますが有罪判決として前科がつきます。
当て逃げの罰金の目安として、物損のみ・初犯のケースでは10〜30万円程度が相場とされています。逃亡期間が長い・前科あり・事故規模が大きいケースではより高い罰金額が科されることがあります。逆に弁護士が示談の成立・不起訴を求める活動を行うことで処分が軽減されたり不起訴(罰金なし)になったりすることがあります。
なお罰金刑による前科については「刑の言い渡しの効力の消滅」という制度があり納付から5年間再犯がなければ法律上の不利益が解消されます。罰金を支払わない場合は労役場留置の処分が課されることがあります。罰金額が心配な場合は弁護士に相談することをおすすめします。
死亡・傷害・物損で異なる3つの量刑
当て逃げの量刑は事故の結果(物損のみ・傷害・死亡)によって大きく異なります。同じ当て逃げでも被害の程度によって適用される法律・法定刑が大きく変わります。特に「物損のみ」と「傷害または死亡が伴うケース」では処分の重さが根本的に異なります。自分の事案がどのケースに該当するかを把握した上で弁護士に相談することが重要です。3つのケースを解説します。
- 物損のみの当て逃げ(典型ケース)
- 傷害が伴う場合(ひき逃げに発展するケース)
- 死亡が伴う場合(最も重大なケース)
物損のみの当て逃げ(典型ケース)
物的損害のみが生じた事故での当て逃げは危険防止措置義務違反(1年以下の懲役または10万円以下の罰金)と報告義務違反(3か月以下の懲役または5万円以下の罰金)が適用されます。これらは当て逃げの中で最も処分が軽いケースです。
実際の量刑として、初犯・物損のみ・逃亡期間が短い・反省の態度が明確なケースでは略式命令による罰金刑(10〜30万円程度)で終わることが多いです。弁護士が早期に示談交渉を行って示談が成立している場合は不起訴処分になることもあります。
ただし逃亡が長期間続いた場合・前科がある場合・事故規模が大きい場合は起訴されて懲役刑が科されることがあります。物損のみの当て逃げであっても刑事処分とは別に違反点数が加算されて行政処分(免許停止など)が科されることがあります。弁護士に依頼して不起訴・罰金の軽減を目指すことが処分を最小化する最善策です。
傷害が伴う場合(ひき逃げに発展するケース)
「当て逃げと思っていたが実は被害者が軽傷を負っていた」というケースがあります。この場合は物損のみの当て逃げではなく人身事故のひき逃げとして扱われます。救護義務違反(10年以下の懲役または100万円以下の罰金)と過失運転致傷罪(7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金)が適用され処分が大幅に重くなります。
事故の直後は被害者の怪我に気づかなかった場合でも後から「実は怪我をしていた」ということが判明した場合はひき逃げとして扱われます。「怪我があるとは思わなかった」という主張は当て逃げの認定を覆すことが難しいケースが多く怪我の程度に応じた重い処分が科されます。
傷害が伴うケースでは初犯でも執行猶予付き懲役刑になる可能性があります。重傷・後遺障害ありの場合は実刑判決になることもあります。当て逃げをしたが傷害の有無が不明な場合は速やかに弁護士に相談して事実関係を確認することが重要です。
死亡が伴う場合(最も重大なケース)
「当て逃げと思っていたが被害者が死亡した」という最も重大なケースでは危険運転致死罪(1年以上20年以下の懲役)または過失運転致死罪(7年以下の懲役・禁錮)と救護義務違反(10年以下の懲役または100万円以下の罰金)が適用されます。
死亡が伴うケースは完全なひき逃げ事件として扱われ物損当て逃げとは根本的に異なります。執行猶予がつきにくく実刑判決になる可能性が高いです。飲酒運転・危険な速度での逃走などが加わる場合はさらに重い処分が科されます。
当て逃げをした後に被害者の状態が不明な場合は逃亡せずに警察に報告して状況を確認することが最善の対応です。死亡を伴うケースでは逮捕後すぐに弁護士に相談することが不可欠です。
まとめ
当て逃げの刑罰は物損のみの場合は罰金10〜30万円程度が相場ですが傷害・死亡が伴う場合はひき逃げとして扱われ大幅に重い処分が科されます。不申告(報告義務違反)と危険防止措置義務違反が複合することで処分が重くなることがあります。示談の成立・反省の態度が量刑に影響するため早期の弁護士相談が最善策です。