告訴状の書き方と記載項目・作成時の注意点・提出方法を解説

刑事事件の被害者が加害者の処罰を求める場合、「告訴状」を作成して提出することが重要です。告訴状は被害届とは異なり、処罰を求める意思を明示した正式な申告書類であり、記載内容が不十分だと受理されないことがあります。この記事では、告訴状の意味・記載項目・作成時の注意点・提出方法・弁護士への依頼メリットを解説します。

告訴状とは何か

告訴状とは、刑事事件の被害者(または一定の告訴権者)が捜査機関に対して加害者の処罰を求める意思を示す申告書類のことです。告訴状を提出することを「刑事告訴」と呼びます。告訴状には被害の事実・加害者の情報・処罰を求める趣旨を明確に記載する必要があります。

告訴状と被害届は異なります。被害届は「被害の事実を申告する書類」であり、処罰を求める意思表示は含まれていません。一方、告訴状は「処罰を求める意思を明示した申告書類」であり法律上の効果が被害届より強くなります。警察は正当な告訴状を受理する義務があり、受理後には起訴・不起訴の結果を告訴人に通知する義務があります。

なお強制わいせつ・名誉毀損など一部の犯罪(親告罪)は告訴がなければ起訴できないため、被害届だけでなく告訴状の提出が不可欠です。親告罪では告訴期限が定められているため時効に注意することも重要です。告訴状を適切に作成・提出することが処罰実現の重要な第一歩となります。

告訴状に記載すべき6つの項目

告訴状には法律上の要件を満たす記載が必要です。内容が不十分だったり必要な項目が抜けていたりすると受理を拒まれたり捜査が進まなかったりすることがあります。なお告訴状には決まった様式はありませんが、記載内容の充実度が受理・捜査の進捗に大きく影響します。告訴状に記載すべき主な6つの項目を解説します。

  • 告訴人の情報
  • 被告訴人(加害者)の情報
  • 告訴の趣旨(何を求めるか)
  • 犯罪の事実(被害の詳細)
  • 証拠の概要
  • 告訴の経緯・状況説明

告訴人の情報

告訴状には告訴人(申告者)の氏名・住所・電話番号・生年月日・職業などを記載します。告訴人は通常被害者本人ですが、法定代理人(未成年の保護者など)や弁護士が代理で告訴する場合もあります。

代理人が告訴する場合は委任状を添付する必要があります。告訴人の情報は警察が後から連絡をとるために正確なものを記載することが重要です。ストーカー・DV・性犯罪の被害者の場合は個人情報の保護について警察に事前に相談しておくことで住所などを非公開にすることができます。

弁護士を代理人として告訴状を提出する場合は弁護士の事務所を連絡先として記載することで、被害者の個人情報が加害者に知られるリスクを最小化することができます。

被告訴人(加害者)の情報

被告訴人とは告訴の対象となる加害者のことです。氏名・住所・職業・生年月日など判明している情報を記載します。加害者が特定できている場合は可能な限り詳細な情報を記載します。

加害者が不明な場合でも「○○駅付近で暴行を加えた男性(推定年齢30代)」「メールアドレスが○○@○○の人物」など特定につながる情報を記載することは可能です。告訴状に被告訴人の氏名が記載されていない場合でも、受理・捜査が行われることがあります。

加害者に関するデジタル情報(SNSアカウント・IPアドレス・メールアドレスなど)がある場合は積極的に記載することで捜査機関が加害者の特定を進める手がかりになります。

告訴の趣旨(何を求めるか)

告訴の趣旨とは「どのような法律に基づき加害者のどのような処罰を求めるか」を明確に記載する部分です。具体的には「被告訴人を○○罪(刑法○条)にて告訴する」という形式で、適用される罪名と処罰を求める意思を明示します。

罪名の特定は非常に重要であり、適切な罪名を選択するためには刑法の知識が必要です。例えば暴行で怪我をさせられた場合は「傷害罪」・お金をだまし取られた場合は「詐欺罪」という形で被害の内容に対応した罪名を記載します。罪名の選択を誤ると告訴の効果が限定される可能性があるため弁護士に相談することをおすすめします。複数の犯罪行為が含まれる場合は複数の罪名を記載することも可能です。

犯罪の事実(被害の詳細)

犯罪の事実は告訴状の中心となる部分であり、いつ・どこで・誰が・何をしたかを具体的かつ客観的に記載します。「○年○月○日、△△において、被告訴人は被告訴人に対して〇〇した」という形式で事実関係を整理して記述します。

感情的な表現を避け、起きた事実を正確に記述することが重要です。犯罪行為の内容・被害者が受けた被害・その結果として生じた損害などを具体的に記載します。複数の被害がある場合は時系列で整理して記載し、犯罪の全体像が把握できるようにします。

事実の記載が不十分だと「犯罪の特定が難しい」と判断される可能性があるため、できるだけ詳細かつ正確に記述することが重要です。

証拠の概要

告訴状には被害の事実を裏付ける証拠の概要を記載し、可能な場合は証拠書類を添付します。証拠の概要として、どのような証拠が存在するか(診断書・写真・録音・メール・振込記録など)を記載します。

証拠書類を添付することで捜査機関が被害の事実を把握しやすくなり、捜査の進展が促進されます。原本は手元に保管し、コピーを告訴状に添付することが基本です。デジタル証拠については印刷物またはデータを保存した記録媒体を合わせて提出することが効果的です。

証拠の概要が明確に記載されていることで、捜査担当者が事件の概要を素早く把握し捜査に着手しやすくなります。証拠が豊富であるほど告訴状が受理される可能性が高まります。

告訴の経緯・状況説明

告訴状にはなぜ今告訴するに至ったか・これまでの経緯・加害者との関係性などを補足的に説明することができます。例えば「被害を受けた後、何度か当事者間での解決を試みたが解決しなかったため告訴するに至った」という経緯を説明することで、捜査機関が事件の背景を理解しやすくなります。

加害者との関係(職場の同僚・元交際相手・知人など)を記載することも有用です。また被害届を既に提出している場合はその旨を記載することで、捜査機関が既存の記録と照合しやすくなります。状況の説明は簡潔かつ事実に基づいて行うことが重要です。

告訴の経緯・背景の説明は必須記載事項ではありませんが、捜査機関に事件の全体像を伝えるための有効な補足情報となります。

告訴状作成時の4つの注意点

告訴状を作成する際にはいくつかの重要な注意点があります。記載内容が不適切だと受理を拒まれたり告訴の効果が限定されたりすることがあります。特に罪名の特定・告訴期限・証拠の添付などは見落としやすい点であるため、事前に確認しておくことが重要です。適切な告訴状を作成するための4つの注意点を解説します。

  • 事実のみを客観的に記載する
  • 罪名を正確に特定する
  • 親告罪の告訴期限に注意する
  • 証拠書類を整えて添付する

事実のみを客観的に記載する

告訴状には被害の事実を客観的かつ正確に記載することが重要です。感情的な表現・主観的な評価・憶測に基づく記述は避け、「いつ・どこで・誰が・何をしたか」という事実のみを記載します。「ひどい人間です」「絶対に許せない」などの感情的な表現や「おそらく○○だと思う」という推測の記述は告訴状には不適切です。

感情的な表現が多く含まれた告訴状は、捜査機関から「感情的な申告であり事実関係が不明確」とみなされることがあります。これにより受理を拒まれるリスクが高まります。事実関係を法的な観点から整理して記述するためには法律の専門知識が必要となります。

弁護士に告訴状の作成を依頼することで、法律上の観点から適切な表現・構成で事実関係を記述してもらうことができます。感情的になっている状況での告訴状作成は被害者自身では難しい面があるため、弁護士のサポートを受けることが告訴状の質を高める上で有効です。

罪名を正確に特定する

告訴状では「何罪で告訴するか」という罪名を正確に特定することが重要です。罪名の特定が不適切だと告訴の効果が限定されたり、捜査機関が見当違いの方向で捜査を進めることがあります。罪名と犯罪の構成要件が一致していることを確認することが必要です。

例えばお金をだまし取られた事案では「詐欺罪(刑法246条)」・暴力を受けた事案では「傷害罪(刑法204条)」・名誉を傷つけられた事案では「名誉毀損罪(刑法230条)」など、被害の内容に対応した正確な罪名を選択します。ひとつの事件に複数の罪名が適用できる場合はすべて記載することが有効です。

罪名の特定には刑法の知識が必要であり一般の方が一人で適切な罪名を選択することは容易ではありません。罪名を誤ると告訴の受理に影響することがあるため、告訴状の作成前に弁護士に確認してもらうことが最善の対応です。

親告罪の告訴期限に注意する

一部の犯罪(親告罪)では告訴できる期間(告訴期限)が定められています。強制わいせつ・名誉毀損・侮辱・器物損壊など親告罪とされる犯罪では、被害者が犯人を知った日から6か月以内に告訴しなければなりません(刑事訴訟法235条)。この期間を過ぎると告訴権が消滅し告訴状を提出しても受理されません。

なお2017年の刑法改正により強制わいせつ罪・強制性交等罪(現:不同意性交等罪)は親告罪から非親告罪に変更されており、告訴なしでも起訴できるようになっています。告訴期限の有無は犯罪の種類によって異なるため自分の事案が親告罪に該当するかどうかを確認することが重要です。

告訴期限が近づいている場合は早急に告訴状を提出する必要があります。弁護士に相談することで自分の事案が親告罪かどうかの確認と、期限内に適切な告訴状を提出するためのサポートを受けることができます。

証拠書類を整えて添付する

告訴状に証拠書類を添付することで、捜査機関が被害の事実を把握しやすくなり捜査の進展が促進されます。証拠書類なしの告訴状は受理されることもありますが、証拠が豊富であるほど捜査機関が積極的に動きやすくなります。

添付すべき証拠書類の種類は事案によって異なります。傷害の場合は診断書・傷の写真、詐欺の場合は振込記録・契約書・メールのプリントアウト、ストーカーの場合は着信履歴・メッセージのスクリーンショット、名誉毀損の場合は問題となった投稿・記事のプリントアウトなど、被害の種類に応じた証拠を準備します。

証拠書類は原本を手元に保管した上でコピーを告訴状に添付することが基本です。デジタル証拠については印刷物として添付するかデータを保存した記録媒体を提出します。証拠の整理が難しい場合は弁護士に相談することで有効な証拠の選択・整理・添付方法についてアドバイスを受けることができます。

告訴状の提出先と提出方法

告訴状は原則として犯罪が発生した場所を管轄する警察署または検察庁に提出します。警察署への提出が一般的ですが、警察が受理を拒む場合や重大事件の場合は直接検察庁(地方検察庁)に提出することも可能です。

告訴状の提出方法には「持参(直接提出)」と「郵送」があります。持参する場合は警察署の刑事課(または担当窓口)に訪問して提出します。郵送する場合は証明が残るよう「配達証明付き書留郵便」を利用することが推奨されます。また弁護士が代理人として提出することも可能です。

告訴状を提出する際は原本と写しを準備し、原本を提出して写し(控え)を手元に保管することが重要です。受理された場合は「告訴受理番号」が記載された受領証が交付されることがあります。警察が受理を拒む場合は検察庁への直接申告・国家公安委員会への苦情申告などの方法もあります。

告訴状を弁護士に依頼するメリット

告訴状は自分で作成することもできますが、弁護士に依頼することで多くのメリットがあります。適切な告訴状の作成・捜査機関への対応・民事上の損害賠償請求との連携など、弁護士を通じることで告訴が成功する可能性が大幅に高まります。

弁護士に依頼することで罪名の選択・構成要件の確認・事実の適切な記述・証拠の整理・添付書類の選択など、告訴状の質を高めるための専門的なサポートを受けることができます。一人では難しい法律上の判断を弁護士が代わりに行うことで受理される可能性が高まります。

また告訴状の提出後も弁護士が捜査機関との連絡窓口となり、捜査の進捗確認・追加資料の提供・捜査機関への働きかけなどを代行します。民事上の損害賠償請求との並行対応も可能であり刑事・民事両面での最善の結果を目指すことができます。精神的な負担を軽減しながら告訴手続きを進めるためにも、弁護士への依頼は不可欠です。

まとめ

告訴状は加害者の処罰を求める正式な申告書類であり、被害届とは法律上の効果が異なります。記載内容・罪名の特定・親告罪の期限・証拠の添付などに注意して作成することが重要です。弁護士に依頼することで適切な告訴状の作成と受理後の手続き全体のサポートを受けることができます。告訴状の作成に迷う場合は早めに弁護士に相談することが重要です。

監修者情報
浜宮 健太 弁護士
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所 自由が丘オフィス 支店長
浜宮 健太 弁護士
東京弁護士会所属 / 犯罪被害者支援委員会(東京弁護士会)

検察官から弁護士へ転身。「弱い立場の人を支え、より良い社会を」をモットーに、刑事事件・犯罪被害者支援を中心に活動。何が問題で、手続きがどう進むのか、不安を一つひとつ解消し、共に問題解決していくことをお約束します。

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監修・執筆
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