痴漢で起訴されるケース・不起訴になるケースと、起訴された場合の流れや対処法を解説

痴漢で逮捕された場合、必ずしも起訴されるわけではありません。示談の成立や証拠の状況によっては不起訴処分となり、刑事裁判を経ずに手続きが終了するケースもあります。一方で、起訴された場合は公判という正式な裁判が開かれ、有罪・無罪の判断が下されることになります。

この記事では、痴漢で起訴されるケース・不起訴になるケースの違い・起訴後の具体的な流れ・そして起訴された場合の対処法についてわかりやすく解説します。

痴漢で起訴されるケース

起訴とは、検察官が被疑者を刑事裁判にかけることを決定する手続きです。すべての逮捕が起訴につながるわけではなく、検察官が証拠・状況・被疑者の態度などを総合的に判断して決定します。痴漢事件で起訴されやすいケースは以下のとおりです。

  • 被害者との示談が成立しなかった場合
  • 常習性・前歴が認められた場合
  • 行為の態様が悪質と判断された場合
  • 証拠が揃っており有罪見込みが高い場合

それぞれの状況を詳しく確認していきましょう。

被害者との示談が成立しなかった場合

痴漢事件において、被害者との示談が成立しているかどうかは、起訴・不起訴の判断に大きく影響します。示談が成立していない場合、被害者の処罰感情が残った状態であるとみなされ、検察官が起訴を選択する可能性が高まります。

示談が成立しない理由はさまざまです。被害者が感情的に傷ついており交渉自体を拒否するケース・示談金の金額で折り合いがつかないケース・弁護士への依頼が遅れて交渉の時間が不足したケースなどがあります。

示談の機会を逃さないためには、逮捕直後から弁護士を通じて交渉を開始することが最も重要です。時間が経つほど被害者の感情が固まり、交渉が難しくなる傾向があります。

常習性・前歴が認められた場合

過去に痴漢や性犯罪に関わる前歴・前科がある場合は、常習性があると判断され、起訴される可能性が格段に高まります。迷惑防止条例には常習犯に対して刑を加重する規定があり、繰り返しの行為は厳しく扱われます。

また、前歴がなくても、同一の路線・時間帯での複数の被害申告がある場合や、捜査の過程で複数の被害者が特定された場合は、常習犯として起訴に至ることがあります。

一度でも痴漢行為を行い発覚した場合、再犯が絶対に許されない状況にあるということを、深く認識しておくことが必要です。

行為の態様が悪質と判断された場合

衣服の上からではなく直接身体に触れた場合・被害者が未成年や子どもだった場合・抵抗する被害者に対して継続的に行為を行った場合など、行為の悪質性が高いと判断されると、起訴される可能性が高まります。

悪質性が高い事案は、迷惑防止条例違反ではなく不同意わいせつ罪(刑法176条)として立件されることがあり、法定刑も重くなります。こうしたケースでは示談が成立しても起訴される場合があるため、より慎重な弁護活動が求められます。

行為の態様は、被害者の供述・防犯カメラ映像・目撃者の証言などをもとに判断されます。

証拠が揃っており有罪見込みが高い場合

検察官は有罪判決を得られる高い見込みがある場合に起訴を選択します。防犯カメラの映像・被害者の一貫した供述・目撃者の証言・物証などが揃っており、被疑者の否認が証拠で覆されていると判断された場合は、起訴される可能性が高くなります。

日本の刑事司法では、証拠が揃った段階で検察が起訴を決定するケースが多く、起訴後の有罪率は非常に高いという現実があります。そのため、起訴前の段階で弁護士に介入してもらい、不起訴に向けた交渉・働きかけを行うことが重要です。

痴漢でも不起訴になるケース

起訴・不起訴の最終的な判断は検察官が行います。以下のようなケースでは不起訴処分となり、刑事裁判を経ずに手続きが終了します。

  • 被害者との示談が成立した場合
  • 証拠が不十分で有罪見込みが低い場合
  • 初犯かつ反省の態度が明確な場合

被害者との示談が成立した場合

不起訴処分を得るうえで最も効果的な方法が、被害者との示談を成立させることです。示談が成立すると被害者の処罰感情が解消され、検察官が「起訴する必要性が低い」と判断して起訴猶予(不起訴)を選択するケースが多くなります。

示談の成立は逮捕前・逮捕後いずれの段階でも有効ですが、勾留期間中に示談を成立させることができれば、釈放・不起訴という流れにつながりやすくなります。示談交渉は必ず弁護士を通じて行い、被害者の意向を尊重しながら進めることが大切です。

示談金の相場は事案によって異なりますが、数十万円から100万円以上になることもあります。金額の妥当性についても弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

証拠が不十分で有罪見込みが低い場合

検察官は、有罪判決を得られる十分な証拠が揃っていないと判断した場合、「嫌疑不十分」として不起訴処分を選択します。痴漢事件では、被害者の供述のみでは証拠として不十分とみなされるケースもあり、客観的な証拠が乏しい場合は不起訴となる可能性があります。

弁護士は、検察が持つ証拠の信頼性や矛盾点を精査し、有罪見込みが低いことを積極的に主張することができます。冤罪被害の場合はとりわけ、証拠の問題点を早期に指摘することが不起訴獲得のための重要な弁護活動となります。

初犯かつ反省の態度が明確な場合

前歴・前科がなく初犯であり、被疑者が深く反省していることが明確な場合は、「起訴猶予」として不起訴処分が選択されることがあります。起訴猶予とは、犯罪の嫌疑はあるものの、犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状などを考慮して起訴を見送る処分です。

反省の態度は、取り調べへの誠実な対応・被害者への謝罪の意思表示・再発防止に向けた具体的な取り組みなどによって示されます。弁護士は、こうした事情を検察官に対して適切に伝える役割も担います。

示談成立と反省の態度の組み合わせが、起訴猶予による不起訴を実現するうえで最も有効なアプローチです。

痴漢で起訴された場合の流れ

痴漢で起訴された場合、手続きは以下の流れで進みます。大きく分けると「略式起訴(書面審理)」と「正式起訴(公判)」の2種類があります。

手続きの段階 内容 目安の期間
逮捕 警察による身柄確保
送検 検察官への事件送致 逮捕から48時間以内
勾留 検察官の請求・裁判官の決定 送検から24時間以内に請求
勾留期間 身柄拘束しながら捜査が続く 最大20日間(10日+延長10日)
起訴・不起訴の決定 検察官が判断 勾留期間内
略式起訴 書面審理で罰金刑 起訴後数週間程度
正式起訴(公判) 法廷での審理・判決 初公判まで1〜数か月

起訴には「略式起訴」と「正式起訴」の2種類があります。

略式起訴は、被疑者の同意を得たうえで、正式な法廷を開かずに書面審理で罰金刑を科す手続きです。比較的軽微な事案で証拠が明確な場合に用いられます。略式起訴に同意するかどうかは任意であり、同意しない場合は正式裁判に移行します。

正式起訴(公判)では、法廷で検察側と弁護側がそれぞれ証拠・主張を展開し、裁判官が審理のうえで判決を下します。初公判までの期間は事案によって異なりますが、1か月から数か月かかることが一般的です。公判では冒頭手続き・証拠調べ・論告求刑・最終弁論・判決という流れで進みます。

判決の内容は、懲役刑(実刑または執行猶予付き)・罰金刑などがあります。有罪判決が確定すると前科がつきます。判決に不服がある場合は、控訴・上告という形で上級の裁判所に審理を求めることができます。

痴漢で起訴された場合の対処法

起訴された後でも、弁護士とともに適切な対応を取ることで、執行猶予の獲得や量刑の軽減を目指すことができます。

  • 引き続き示談交渉を進める
  • 公判に向けた証拠・主張の準備を弁護士と進める
  • 情状酌量の事情を積み上げる

引き続き示談交渉を進める

起訴された後でも、示談が成立していない場合は引き続き交渉を進める価値があります。公判前に示談が成立すれば、量刑判断において被害者の処罰感情がなくなったことが有利な事情として考慮され、執行猶予付き判決や罰金刑にとどまる可能性が高まります。

また、起訴後に示談が成立した場合でも、弁護人が公判で示談の事実を証拠として提出することで、裁判官の心証に働きかけることができます。起訴されたからといって示談交渉をあきらめる必要はありません。

示談交渉は引き続き弁護士に一任し、被害者の意向を丁寧に尊重しながら進めてもらうことが大切です。

公判に向けた証拠・主張の準備を弁護士と進める

正式起訴となった場合は、公判に向けた弁護活動が重要になります。弁護士は検察側の証拠を精査し、証拠の信頼性・捜査手続きの適正さ・被告人に有利な事実などを整理して弁護方針を立てます。

被告人が事実を認めている場合は、反省の態度・再発防止の取り組み・家族のサポート体制などを示す情状証拠を揃えることが、量刑を軽減するうえで有効です。一方、事実を争う(否認する)場合は、証拠の矛盾を指摘し無罪または無罪に近い判決を目指す弁護活動が中心となります。

公判に向けた準備は時間と労力を要するため、起訴が決まった段階で速やかに弁護士と方針を確認することが求められます。

情状酌量の事情を積み上げる

有罪判決が避けられない状況でも、情状酌量によって量刑を軽くすることを目指すことができます。情状酌量とは、犯罪の動機・背景・被告人の反省の程度・被害者への誠意ある対応などを考慮して、法定刑の範囲内で刑を軽くする判断です。

具体的には、示談の成立・謝罪文の提出・再発防止プログラムへの参加・家族や職場のサポート体制の証明・社会貢献活動への取り組みなどが情状酌量の事情として考慮されます。

弁護士は、こうした事情を証拠として公判に提出し、裁判官に対して執行猶予付き判決や量刑の軽減を求める弁論を行います。一つひとつの積み上げが最終的な判決に影響するため、弁護士と連携しながらできることをすべて行うことが重要です。

まとめ

痴漢で起訴されるかどうかは、示談の成立・証拠の状況・常習性の有無・行為の悪質性などによって判断されます。示談が成立していれば不起訴処分となる可能性が高く、前科を回避できます。

起訴された場合は、略式起訴(書面審理による罰金刑)または正式起訴(公判)という流れで手続きが進みます。起訴後でも示談交渉・証拠準備・情状酌量の積み上げによって、執行猶予や量刑の軽減を目指すことができます。

逮捕・起訴のリスクがある状況では、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが最善の対応です。 時間が経てば経つほど取れる選択肢は狭まるため、初動を大切にしましょう。

監修者情報
浜宮 健太 弁護士
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所 自由が丘オフィス 支店長
浜宮 健太 弁護士
東京弁護士会所属 / 犯罪被害者支援委員会(東京弁護士会)

検察官から弁護士へ転身。「弱い立場の人を支え、より良い社会を」をモットーに、刑事事件・犯罪被害者支援を中心に活動。何が問題で、手続きがどう進むのか、不安を一つひとつ解消し、共に問題解決していくことをお約束します。

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監修・執筆
弁護士法人 稲葉セントラル法律事務所

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